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HEAD JAPAN REBELS
日本から世界へ

原石を磨き頂点を目指す

ワールドカップのブランド別ランキングで首位を走り続けるHEAD。自らをヘッド・ワールドカップ・レベルズと名乗り、最強ファクトリーチームとしてアルペンレース界に君臨する。レベルズ(REBELS)とは、反逆者という意味。既存の価値観にとらわれず、自らの意思で道を切り開いていこうという意思表明でもある。多くのレーサーがその名にふさわしい活躍で、タイトルを獲得してきたが、そんなワールドカップ・レベルズに続けと、日本のHEADチームも、着実に強化の成果をあげている。HEAD JAPAN REBELS。日本から世界の頂点をめざす彼らの姿を紹介する。

日本のヘッドチーム、HEAD JAPAN REBELSは、総勢約200人のメンバーで構成される。中学生から社会人まで、いずれも本格的に競技スキーに打ち込み、いずれは世界の舞台での活躍を夢見る精鋭たちだ。多くの選手は、ふだんは学校のスキー部や所属チームで活動している。だが、全日本選手権やファーイーストカップなど、大きな大会の前には、HEADチームとしての事前合宿を行なうなど、単なるマテリアルのサポートだけにとどまらない、幅広い活動を行なっているのが特徴だ。

「200人という規模は、メーカーが組織するチームとしては、かなり大きいと思います。この形で強化を始めて6年目の冬になりますが、着実に成果をあげてきているという実感があります」というのは、チームディレクターとしてジャパン・レベルズを統括する佐藤浩行。小さな地方大会にもこまめに足を運び、選手たちとともに汗を流し、少しずつチームとしての土台を築いてきた人物だ。
「今はまだ、結果が出なくても、少しでも長くスキーを続けてほしいというのが、選手たちへの願いです。いずれ芽が出るかもしれないし、仮に活躍できずに終わっても、それはその後の人生への原動力となる。そんな彼らのお手伝いが少しでもできればと思っています」

200人いるメンバーの中で、世界への挑戦権をつかめる選手など、ほんのひとにぎりだろう。多くの選手にとって、ワールドカップに出ることはもちろん、国体や全日本選手権に出場するのでさえ簡単なことではない。だが、夢は持ち続けなければ、絶対に実現は不可能。だとしたら夢を持ち続けられるだけの環境を用意してあげようというのが、佐藤の、そしてヘッドのレーシングスタッフの思いだという。

すべては草の根から。少しずつ根を伸ばし、やがて大きな果実を実らせたい

向川桜子秋田ゼロックス

Sakurako MUKOGAWA

今季からHEADレベルズに加入した向川。まだ2本目進出の経験はないが、全日本選手権のスラロームを制し初の世界選手権へ挑む

新賢範ブレイン

Masanori SHIN

HEAD移籍1年目でファーイーストカップのGS総合優勝を果たし、今季はワールドカップにフル参戦。世界の壁に苦しみながらも挑戦を続ける

「すべては草の根からです。少しずつ少しずつ根を伸ばしていき、そこに大きな果実を実らせたいと夢見ています」

そんな願いを具体化するのが、今季から本格的に始めたというユースキャンプだ。中学生・高校生の世代の底上げを図るため、この世代の強化に豊富な経験を持つ滝下靖之をチームに迎えた。現役時代はダウンヒラーとしてワールドカップやオリンピックに出場。引退後は地元北海道をベースにジュニア・ユースの強化に力を入れてきた滝下。彼の加入で、チームに活気が生まれ、選手の目標設定もより具体的になったという。

さらに、ナショナルチームのトレーナーとしての経験が豊富な橘井健司を招き、コンディショニング面からの管理も充実させた。

こうして用具・技術・身体と心という、幅広いサポート体制が整ったことは、HEADジャパン・レベルズにとっての大きなアドバンテージとなることだろう。
「年末の全日本選手権の前にも、メンバーとスタッフがそろって、ミニ合宿を行ないました。とても雰囲気がよく、チーム力ってこういうところから生まれるんだなと実感しました」と佐藤は語る。

ファクトリーチーム最強の誇りを胸に、世界に羽ばたくHEAD JAPAN REBELS

小山陽平日本体育大学

Yohei KOYAMA

全日本選手権で鮮烈な滑りを見せた小山陽平。ナショナルチームの加藤聖五、若月隼太らとともに次代の日本を背負うべき存在だ

荒井美桜サンミリオン

Mio ARAI

高校3年時に佐藤ディレクターが自らスカウティング。ヘッドのエースとしてじっくりと強化に取り組んでいる荒井美桜

新井真季子日本保育サービス

Makiko ARAI

両膝の前十字靭帯断裂というけがから復活途上。恐怖心からかGSではまだ自分の滑りができないが、全日本選手権ではスラローム3位に入賞した

本社サポートを得て世界へ挑戦

これらのメンバーの中には、新賢範(ブレイン)、向川桜子(秋田ゼロックス)、荒井美桜(サンミリオン)ら、ナショナルチームに選抜されている選手も含まれている。彼らはHEADジャパン内では“Sランク”とされ、国内よりも主に世界の舞台で戦う選手だ。たとえば、新は昨季からヘッドに移籍。1年目でファーイーストカップのGSタイトルをつかみ、ナショナルチームに復帰するとともに、ワールドカップへと羽ばたいていった。また今季はナショナルチームから外れてしまったが、20歳にしてすでにワールドカップ・世界選手権への出場経験を持つ小山陽平(日体大)も、同じSランク。彼ら4人は、オーストリアのHEAD本社からのサポートを受けられる。したがって海外遠征のときに、本社に立ち寄り、スキーを選んだり、ブーツのチューニングをしてもらったりということが可能。海外で戦ううえでの大きな力となっているのだ。

今年の全日本選手権では、向川がスラロームで優勝し、オーレ世界選手権への出場権を獲得。昨年は、わずかに及ばず平昌五輪を逃した向川にとっては、うれしい勝利だった。また、小山は、スラロームの1本目で、ナショナルチームの実力者たちを押しのけ2位。優勝した湯浅直樹にただひとり肉薄する滑りを見せた。合計タイムでは3位に下がったものの、見るものに強烈な印象を残す滑りだった。佐藤によれば、シーズン序盤はスキーのセットアップに苦労していた小山だが、全日本選手権の前に本社から彼の滑りにピッタリ合う最高のスキーが送られてきて、一気に調子をあげたという。ナショナルチーム復帰に向けて、シーズン後半の戦いが楽しみだ。

また荒井は、1月の遠征で膝を故障し一時レースから離れているが、治り次第復帰予定。ファーイーストカップでの活躍を期待したい。

現在のヘッドチームの土台を作ったチームディレクターの佐藤浩行。6年間じっくりと取り組んでHEAD JAPAN REBELS と呼べるだけのものができたという

今シーズンの全日本スキー選手権時のワックスルーム。選手の数が多いので作業量は膨大だが、ていねいに愛情を込めて仕上げ、選手の活躍を支える

今季からチームスタッフに加わった滝下靖之(右)。ジュニア・ユース世代の強化に関する豊富な経験とノウハウが大きな力となる

文・写真:田草川嘉男