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金子あゆみ
速さと強さを引き出すあゆみのスタイル

ダイナミックな滑りで多くのファンを魅了する金子あゆみ。
彼女の滑りの鋭さは、その切りかえにポイントがある。重心を低く保った無駄のない切りかえから、圧倒的なターンスピードとスキーの走りを生み出しているのだ。
ここでは、スピードに乗ったかっこいい滑りを実現するために、金子あゆみのスタイルを詳しく解説していく。

金子あゆみ解説

かねこあゆみ●1987年生まれ、新潟県出身。2008年、20歳のときに全日本スキー技術選手権大会にデビュー。初出場で総合12位を記録する。3年目の2010年に総合2位に躍進。11年の白馬八方尾根大会で初優勝を遂げる。SAJナショナルデモンストレーター認定4期。今シーズンから新たに「Moun10s Snow Academy(マウンテンズスノーアカデミー)」を立ち上げ、岐阜県の高鷲スノーパークを拠点にレッスン活動を行なう

切りかえに集約されるテクニック
重さを抜かず、次を捉える

私のスタイルは、ターンスピードや滑りの鋭さにあると思っています。滑りの鋭さ、強さは、腰を下げるということではなく、重心を低く保ち、しっかりとスキーに重さを乗せていくことで生まれてきます。
スキーに重さを乗せていく上で、切りかえの動きがとても大切です。ターン後半に雪面から受けた圧を逃さないように切りかえ、次のターンへスムーズにつなげていくのです。

3つのポイント

切りかえのポイントは、3つです。まず、左右のスキーの高低差をいかにスムーズに入れかえられるか。谷脚(前の外脚)のたたみと山脚(次の外脚)の伸ばしを、力を上に抜くことなくスムーズに行なうことがポイントです。
そして胸の向き。これが正しい方向を捉えていないと、次の外スキーの捉えがあまくなり、走りやスピードを引き出すことはできません。
最後に重心移動です。身体とスキーをクロスオーバーさせて、外脚を身体の下から外側に出して、確実に雪面を捉えていくことが重要です。

この3つのポイントを意識することで、重さを抜かない切りかえが可能になります。頭の位置、目線を変えることなく、スキーに重さを乗せたまま、切りかえていくのです。
無駄のない切りかえから次のターン前半を捉えられれば、スキーはたわみ、そのたわみが走りと、ターンスピードにつながっていきます。

KEY POINT 1
高低差

ターン後半、谷側の低い位置にある外脚がたたまれることで、目線の高さを変えずにニュートラルを迎えています。このときに外脚をうまくたたむことができないと、上に抜けて立ち上がる動作になってしまうので注意してください。重さを抜かないように外脚がたたまれると同時に、次の前半に向けて山脚(次の外脚)を伸ばしていくことで、雪面を捉えていくことが大切です

KEY POINT 2
胸の向き

ターン後半~切りかえにかけて、胸の向きが山側を向かないように注意します。山側を向いてしまうとスキーの走りが生まれず、オートマチックな重心移動を行なうことができないからです。スキーの進行方向より下向き(谷側)、斜め45度くらいのイメージですが、逆に下側を向きすぎると、次の外スキーの捉えが軽くなってしまいます。胸の向きは、かなりシビアな感覚が求められるのです

KEY POINT 3
重心移動

あくまでも、スキーをしっかりたわませることができて、走りを生み出せたら……の話ですが、スキーが身体の下を通過して切りかわっていく動きを感じられるはずです。このとき、重心を谷側に移動させることも大切です。重心とスキーの軌道をクロスさせ、身体よりもスキーを外側に出し、外からの圧を捉えるのです。スキーを外側に出せず、身体の下で踏みつけるような荷重の意識では、ハイスピードでの滑りには対応できません

写真:黒崎雅久 / 撮影協力:志賀高原 熊の湯スキー場、熊の湯温泉 熊の湯ホテル
制作協力:揚力株式会社