スキー情報総合サイト スキーネット:SKINET

春夏秋闘GRASS
「令和」からは「二刀流」にしてみよう

夏・冬二刀で
「Jr世界選手権日本代表」

DLWHグラススキーチームの軌跡 一流の「滑る二刀流」で大活躍

前田知沙樹

まえだちさき●1998年生まれ、長野県塩尻市出身。アルペンスキーではFIS通算22勝。今季はFECジャパンシリーズ花輪大会優勝をはじめ、FEC種目総合優勝でWC出場権利を獲得。2019FIS Jr世界選手権日本代表リレハンメルユースオリンピック日本代表。グラススキーでは世界選手権とジュニア世界選手権通算合計14個の金メダルを獲得。アルペンスキーとグラススキー両方からナショナル強化指定を受けて活躍中

環境を変えずに
FEC種目別総合優勝 WC挑戦へ

前田知沙樹

2018年8月、本来であればナショナルチームメンバーの一員としてヨーロッパの氷河で練習していたはずだったが、同じヨーロッパのイタリア・モンテカンピオーネでFISグラススキーワールドカップに出場、優勝を遂げていた。その後の世界ジュニアでは夢の4冠を獲得し、グラススキーシーズンは目標を達成。

その後、他のアルペントップ選手よりは遅れて10月末よりヨーロッパ氷河に入り、雪上トレーニングに入った。前田知沙樹の流れは、常にアルペンスキーとグラススキーのそれぞれのシーズンで、技術的に求めるものがつながっていて、アルペンスキーでもグラススキーでも用具の違いに関係なく、将来を見据えた技術の変化から滑りの「変身」を求めている。小学生から現在に至るまでコーチングもマテリアルのメンテナンスもスタッフが一貫して「流れ」をつかんでいるのでロスが少ない。

「ワールドカップで優勝」の目標にはFECでの中途半端な活躍は必要ないので、「FECはぶっちぎり優勝」の目標を完遂するべく、12月の中国大会は回避、ヨーロッパで環境を変えずにトレーニングとレース挑戦に専念した。  12月末の全日本選手権。今までにはないスピードを武器に必勝を期して挑戦したが、1本目コース前半で「片反(片足通過反則)」により早々に挑戦が終了した。

2度と同じ失敗をしないと誓いを立て環境を変えずに練習に専念。2月のFEC韓国で準優勝等、表彰台に立ち続け、2月末のFISジャパンシリーズ秋田大会では念願のFEC初優勝も遂げた。その後ロシアシリーズまで上位をキープして2019FECで種目別シリーズ優勝を果たした。ワールドカップへの個人出場権を確実にする快挙だった。

 FECでのぶっちぎりの優勝はかなわなかったが、この後も流れを変えず、環境を変えず、今まで通り続ければ「年度成績が落ちたことのない」という実績はこれからも続くだろう。

田村みのり

たむらみのり●1998年生まれ 神奈川県横浜市出身。慶応義塾大学在学中。2019FISJr世界選手権日本代表 FIS全日本選手権SL5位(年代別1位)。2017全国高等学校総合体育大会(インターハイ)女子SL優勝。FIS公認通算2勝。2018FISグラススキー世界ジュニア選手権日本代表。2つの銀メダル獲得の他、デモンストレーターとしても活躍中

銀メダリストの葛藤

田村みのり

「銀メダル」の獲得は、日本のグラススキー選手にとって悲願だった時代が30年間も続いていたのだから、現在金メダル以外の「メダルコレクター」となっている田村みのり選手の成績は、とても立派なキャリアといってよい。しかしながら「優勝! 金メダル獲得」への夢は尽きるわけがないのが「銀メダリストの葛藤」だろう。

偶然にも同じチーム内に前田知沙樹と前田茉里乃という年代を代表する2人のトップ選手がいてレースではライバルになっている。しかしながら練習環境の中にハイレベルなタイプの違うライバルがいることは貴重な「宝」でもある。どう捉えて、どう生かすかは選手自身の気持ちのもちようでもある。

まずは10月末から約2か月間のオーストリア遠征に挑戦し、ベースアップが果たされた。体を痛めなくなったのは大きな進歩だった。全日本選手権直前に調子を上げて、SL2本目では2位のタイムからトータルで5位まで順位を上げて、ジュニア1位となってJr世界選手権の権利を獲得した。アルペンスキーでは世界を経験したことのなかった田村みのり選手には初の快挙だった。もちろん、いきなりの世界挑戦で好成績が期待できるわけもない。

大切なのは「どう捉えて、どう生かすか?」だと思う。二刀流選手の挑戦に休息はない。

前田茉里乃

まえだまりの●2000年生まれ、長野県塩尻市出身。松本大学在学中 2019FISJr世界選手権日本代表。FIS全日本選手権SL7位(年代別1位)。2018全国高校選抜スキー大会SL優勝、総合優勝、全日本選抜ジュニア選手権SGL優勝等SAJ通算7勝。グラススキーでも2016FIS世界ジュニア選手権で金メダル獲得等、ナショナルチームとして日本の代表選手としての活躍が続いている

世界の入り口。その先の世界

前田茉里乃

12月28日、FIS全日本選手権が北海道阿寒湖国設スキー場で開催された。1本目、第一シードから一つだけもれた16番スタートの前田茉里乃は平凡なタイムでゴールし、ゼッケンバックとされる17位の順位となった。周囲のスタッフを含め非常に残念な気持ちとなったのは想像に難くない。

約2カ月、オーストリアでこの日のために必死で耐えぬいてきたのは選手だけではなく、スタッフも同じであって、一緒に喜びたかったのだから。

そんな失意のどん底から2本目はベストタイムで滑り7位まで順位を上げて年代別1位の順位からJr世界選手権の日本代表選手となった。スタッフたちが感じた「どん底の気持ち」はいったいなんだったのか? と考えるほど、変身的な滑りができるのが前田茉里乃選手の特徴でもある。

年間のターン数ではこの3名の選手たちの中でも一番多く10万ターンを下ることはない。

それが二刀流選手たちの強みだ。グラススキーではチルドレン時代も世界でのタイトルを総なめにして、FIS1年目にはJr世界選手権でも優勝した。しかし、その上の世代やレベルの中では一向に力を発揮できていないのも事実。本当の意味での「世界の入り口の先の世界」での活躍を願っている。

文:飛鳥井匠哉