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ブーツフィッティング・ドキュメント
王様の イスに 座れば 2

プロセス その2シェルフォーミング

用具に興味のある読者ならば「フィッシャーのバキュームブーツ」と言えば、一度は聞いたことがあるか、もしくはすでに履いて使ったことがあるという人もいるかもしれない。がしかし、ここではまだ試したことがない、あるいは初めて聞いたという人のために紹介したい。

そもそも「バキューム」という言葉の由来は、フィッシャースキーの開発方法から生まれたもので、その名のとおり金型に入れた材料を真空状態にすることで、スキーの出来を左右する接着剤を均一に浸透させることができるという技術からきているそうだ。それをイメージして名づけられたのが、今日のバキュームブーツ。〝イメージして〟というのは、実際には「真空」にするわけではないからなのだ。ここでSの出番だ。

「お、おおおおっ……!」
堀川さんがスタートボタンを押すと、Sの足に圧がかかり始める。そう、ブーツのバキュームとは、空気圧によってシェルを成形させるもの。といっても、痛みを感じるほどではなく、多少締めつけられる感覚がある程度だ。シェルの成形にかかる時間は約7分。と、ここで時間を少し巻き戻し、ブーツの選定後から「おおおおっ……!」までの行程を追っていこう。

ブーツを決めたら、まずは試し履き。今回は25・5㌢というSにとってぴったりのサイズを履くことになったので、正直つま先部分がやや当たってきつい印象。しかし慌てることなかれ。この段階では踵が収まっていないので当然なのだそう。ちょっと不安なSだったが、説明を信じて次の行程である熱成形の準備に入る。堀川さんはSの足を持ち、先の3Dフットスキャナーによって示された、あらかじめ当たりの出そうなポイントに、いくつかの小さなクッションパットを貼っていく。最後に、スリッパの前側だけを切り取ったようなカップをつま先にかぶせる。最後のカップは薄い素材だが、これをかぶせた状態でインナーブーツを履き、熱成形に臨むことで、足全体がやや後方(踵側)に押され、踵部分がしっかりと収まるようにフィットするのだという。

 「なるほど~」
Sが感心していると、「チン!」とシェルを温めていた専用のオーブンが合図する。さっそく足を入れ、ふたたび王様のイスの前に立つ。熱で柔らかくなったブーツ(シェル)に冷却用のクーリングパットを巻き、さらにその上にバキューム用のコンプレッションパットを装着し、準備完了。堀川さんがボタンを押すと、Sが例のように声を上げるという流れだ。

空気圧で足型にフィットさせる

  • あまたの候補から選ばれた「レンジャーワン120」を試し履き。この段階では少し当たりもある

  • 熱成形を行なうため、まずはインナーブーツを取り出し、専用のオーブンでシェルを加熱

  • バキュームを行なうにあたって、あらかじめ当たりの出やすいところにクッションパットを貼り、つま先にはカップをかぶせることで、踵を奥までしっかり押し込めるように準備する

  • シェルの加熱が終了したら、ブーツの上から冷却用のクーリングパットと、バキューム用のコンプレッションパットを装着

  • いざ、バキューム開始。パット内を風船のように膨らませ、空気圧でブーツの形を作りながら、同時に冷やして成形していく

狭くすることができるという最大の強み

時間を元に戻そう。「ヴィーーーン」という音とともに、コンプレッションパットに空気が入ってくる。中で風船のようになり、その空気圧でブーツの形を作りながら、同時に冷やしていく。空気圧はミリバールという単位でコントロールされ、強くすればするほどフィット感が増す。

「バキュームは、狭くすることができるんです」
シェルの熱成形が当たり前となった昨今、各メーカーからさまざまな方法が発表されているが、そのなかにあってパイオニアであるフィッシャーのバキュームブーツが変わらず好評を博している理由は、まさにここにある。「熱で広げる」ことはできても「(例えば踵などを)圧縮をかけて細くする」ことにかけては、その名のとおりバキュームの専売特許だ。もちろん、フィット感を増すことが万人にとって良いということではなく、そこはあくまでも履く人次第。当たりを少なく、快適性を重視したいのなら、空気圧をそこまで上げず、ゆったりめに作るという選択もある。また、仮に最初のバキュームで思いどおりのフィット感が得られなかったとしても、1足のブーツにつき5回までバキュームし直すことが可能なので、理想の感覚を求めることができる。

さて、Sのブーツはどうなったのか。バキュームが完了し、台から降りて感触を確かめる。第一印象は「軽い!」。ブーツ自体が軽量ということもあるが、それ以上に、バキュームする前よりフィット感が高まったことでの「軽快さ」を感じる。加えて、踵の収まり具合、つま先の自由度、そして足裏全体の踏みつけ感も、すべてがナチュラル。ついに出合ってしまった……。

「レンジャーワンの〝ONE〟には、上級者も初中級者も関係なく『この1足があれば、みんながハッピーになれる』という思いが込められています。Sさんもぜひ、このブーツでシーズンを楽しんでもらえたらうれしいです」

最後にそんなコンセプトを聞かされて、完全にゲレンデへと向かってしまったココロと、現実的には机に向かわなければならぬカラダ。占い師よ、編集者Sはいったいどこに落ち着くというのか。

RNG ONE 120 PBV WALK

¥79,000+税 / サイズ:25.5/26.5~28.5cm / フレックス:120 / ラスト幅:101mm+3mm / 重量:1840g(26.5cm)

完成した世界に1足だけのブーツ。3Dフットスキャナーが搭載された新型バキュームは、足の悩みや特徴が視覚化されるため、作り手との意思の疎通をスムーズに行なえるのがいい

広い可動域を備えたスキー/ウオークモードの切りかえや、厳しい寒さのなかでも着脱が簡単にできるフローティングエントリーなど、便利な機能が満載の「レンジャーワン」

RNG ONE 130 PBV WALK

¥88,000+税
サイズ:25.5/26.5~28.5cm
フレックス:130
ラスト幅:101mm+3mm
重量:1860g(26.5cm)

RNG ONE 110 PBV WALK

¥72,000+税
サイズ:25.5/26.5~28.5cm
フレックス:110
ラスト幅:101mm+3mm
重量:1840g(26.5cm)

MY RNG ONE 90 PBV WALK

Women¥72,000+税
サイズ:22.5/23.5~25.5cm
フレックス:90
ラスト幅:101mm+3mm
重量:1740g(24.5cm)

MY RNG ONE 80 PBV WALK

Women¥67,000+税
サイズ:22.5/23.5~25.5cm
フレックス:80
ラスト幅:101mm+3mm
重量:1740g(24.5cm)

バキュームステーション設置ショップ

  • バキュームフィットブーツ取扱店
  • ゾーンフィット(パワードバイバキューム)対応店
  • 3Dスキャニング付き新型バキュームステーション設置店
  • ※バキュームコンフォートフィットのみ 対応店
    北海道
  • ロータリースポーツ(旭川市)
  • スポーツデポ 旭川永山店
  • BOOTS SOLUTIONS(倶知安町)
  • THE NORTH FACE GRAVITY NISEKO(倶知安町)
  • スポーツたきぐち 倶知安店
  • パドルクラブ(札幌市)
  • モイワ山荘(札幌市)
  • Mt.石井スポーツ 宮の沢店
  • スポーツデポ 札幌光星店
  • SKI PRO SHOP EBISU(函館市)
  • 東北
  • Mt.石井スポーツ 盛岡店
  • Mt.石井スポーツ 仙台泉店
  • スポーツデポ 仙台泉店
  • カスカワスポーツ 本店(山形市)
  • スポーツデポ 山形店
  • スポーツデポ 郡山フェスタ店
  • 関東
  • K’S FACTORY(佐野市)
  • スキーショップDaDaDa(草津町)
  • スポーツササキ(桐生市)
  • スポーツデポ 高崎店
  • カンダハー 大宮店
  • カンダハー 横浜店
  • スポーツデポ 昭島店
  • フィッシャー・チューニング・ベース TOKYO(神田)
  • スキーショップべイル(神田)
  • フソウスキー&ブーツチューン(神田)
  • ヴィクトリア 本店(神田)
  • アスペン(神田)
  • オオイワスポーツ(神田)
  • カンダハー 本店(神田)
  • Mt.石井スポーツ カンダコンペカン
  • FOOT PRO STATION(神田)
  • アルペンマウンテンズ 練馬関町店
  • アプロショップ ダイチ(八王子)
  • 甲信越
  • スポーツデポ 新潟河渡店
  • 白馬 ヤマトヤ
  • アルペン 諏訪インター店
  • スポーツデポ 南松本店
  • スポーツデポ 上越店
  • エキップ(長岡市)
  • Mt.石井スポーツ 新潟店
  • クレブスポーツ六日町
  • 中部
  • アルペン 岡崎店
  • パドルクラブ 名古屋店
  • アルペンMountains一社店
  • スポーツデポ 山王店
  • ヒマラヤ 本館(岐阜市)
  • スポーツ ワークス キープ・ワン(高山市)
  • スポーツデポ 岐阜県庁前店
  • アルペン 高岡店
  • 太陽スポーツ ランプジャック掛尾店
  • スポーツサロン 葉山(金沢市)
  • スポーツデポ 金沢大桑店
  • 関西以南
  • アルペン 京都南インター店
  • モリヤマスポーツ 本店(守山市)
  • タナベスポーツ 松屋町店
  • スポーツデポ 新大阪店/li>
  • IBS石井スポーツ ダイエー神戸三宮駅前店
  • ※持田スポーツ(出雲市)
  • パワーズ 広島店(広島市中区)
  • スキープロショップ ピステ(広島市)
  • ラリーグラス(福岡市)

文:編集部 / 写真:渡辺智宏 / イラスト:さいとうじゅん / 協力:フィッシャー・チューニング・ベースTOKYO