スキー情報総合サイト スキーネット:SKINET

生まれ変わったRC4で新境地を拓く
MATERIAL STORY FISCHER

フィッシャーの代名詞である名機「RC4」シリーズが2020-21シーズンに向け、飛躍的な進化を遂げた。
注ぎ込まれたのは、フィッシャーが世界に誇るレーシングスキーの、あの加速感、レスポンス、安定感――。
大幅にリファインされたエキスパートスキーの実力は?
4人のプレーヤーの視点から、詳しくリポートする。

  • RC4 CT

    レーシングモデルとほぼ同等のハイスペックモデル

    2021モデルのRC4シリーズに加わった注目の新機種。通常は1枚のカーボンダイアゴテックスを2枚入れることで、スキーの剛性を強化。SLスキーに限りなく近い高速安定性とレスポンス、強いグリップ力を実現

    • ¥166,000(税別)
    • サイズ(cm):165、170、175、180
    • サイドカット(mm):113-65-98
    • ラディウス(m):15.5(175cm)
  • RC4 RC Pro

    エキスパート向け・ロングターンモデル

    GS的なサイドカーブを持つエキスパートモデル。M/Oプレート搭載で、足元のグリップ力が増し、高速域での安定性が向上。ミドル~ロングターンで、レーシングモデルさながらの切れや走りを体感できる

    • ¥145,000(税別)
    • サイズ(cm):170、175、180、185
    • サイドカット(mm):111-66-96
    • ラディウス(m):18(175cm)
  • RC4 SC Pro

    エキスパート向け・ショートターンモデル

    SL的なサイドカーブを持つエキスパートモデル。シェイプドTIによるトーションとフレックスの絶妙なバランスで、ショート~ミドルターンで威力を発揮。トップの捉えも早く、コンパクトなターンが描ける

    • ¥145,000(税別)
    • サイズ(cm):155、160、165
    • サイドカット(mm):119-66-104
    • ラディウス(m):13(165cm)


大場朱莉
マテリアルストーリー

Akari OBA × FISCHER

おおばあかり●1987年生まれ。宮城県出身。技術選では毎年上位で活躍。一方で、レーシングの指導にも力を注ぐ。5年前からフィッシャーに。「自分でも滑りが変わったと思う。フィッシャーはとにかく“簡単に曲がる”。だから、ターン弧の調整が自在なんです。縦長にもいけるし深くもできる。なんでもできるから不安がない。積極的に攻める気持ちが自ずとわいてくる、そんなスキーです」

これなら全部、カービングターンでいける

履いてみて、改めて思った スキーってシンプルなんだと

初めてフィッシャーを履いたときの衝撃は、今も忘れられない。

それまでは、レースでスタート台に立ったとき、「あのセットをどういうふうに曲がっていけばいいか」と懸命に考えていた。それがフィッシャーを履くようになると、いつの間にか「どこをどう攻めようか」と思うようになっていた。なぜなら、どんなターンをしたところで、このスキーなら全部、カービングでいけるから――。


フィッシャーとの出会いをそんなふうに語った大場朱莉。自身にとって、その唯一無二の魅力は、〝とにかくカービングターンがしやすい〟ということだ。「人にはよく、簡単にスキーし過ぎだって言われるんです(笑)。でも、スキーってそもそもシンプルだと思う。曲がるのはあくまでスキー。乗り手は、そのための準備をしてあげればいい。フィッシャーが何よりいいのは、この〝簡単に曲がってくれる〟というところ。だから、速いんです」

その世界的にも評価の高いフィッシャー・レーシングのエッセンスが、強力に注ぎ込まれたのが、今回リニューアルされた「RC4」シリーズだ。一般的に、市販のモデルは選手の履くレースモデルに劣るイメージがあるが、この2021モデルのRC4は、加速感、足元のグリップ力、レスポンスの良さ――どれをとってもレースモデルに限りなく近いという。それもそのはず、今回のリニューアルのコンセプトは、「市販モデルのレベルを引き上げ、レースモデルと同等にする」ということ。フィッシャー・レーシングが持つ抜群の切れや走りを、もっと広く、多くのスキーヤーに感じてほしい、そんな願いが込められているのだ。

捉えが早く、安定感がある だから安心して乗れる

どんな条件でもカービングで滑れたら、それが一番かっこいい――。生まれ変わったRC4は、それを可能にしてくれるだけの高いポテンシャルを秘めていると、大場は感じている。

理由の一つは、ターンの入りが非常にスムーズなこと。「四角いトップの形状により、捉えが非常に早いのが、このスキーの特徴の一つ。トップが入りやすくて、早く噛んでカービングに入っていけるので、ターン中は安心して乗っていればいい。角づけが緩めば反り上がったトップのエッジは外れるので、邪魔にもなりません」

もう一つは、レース用のM/Oプレートが搭載され、安定感が増したこと。「それでいて、ほどよいトーションとフレックスが感じられる。これは部分的にシェイプされたチタンシート(シェイプドTI)の効果だと思います。だからたわみが軟らかく、トーションも強すぎず、切りかえもスムーズ。非常に扱いやすいですね」

ロング系の「RCプロ」、ショート系の「SCプロ」、そしてハイスペックなニューモデルの「CT」。3機種すべてに共通するのは、レーシングスキーに引けを取らない、あの〝カービングのしやすさ〟だ。「安定感のあるスキーは、安心して乗っていられる。だからこそ、スピードも出せるんです。むしろスピードが怖いという人にこそ、履いてほしい。〝これなら全部カービングでいける!〟というフィッシャーの良さを、きっと感じてもらえると思います」

RC4 2021モデルNEWテクノロジー

  • シェイプドTI

    トップの四角い形状により
    有効エッジをより長く

    部分的にカットすることで、ほどよいトーションとフレックスを実現

    スキーのほぼ全面にチタニウムのシートを入れ、スキーの強度を出している。ポイントは、スキーのセンター部分をはじめ、部分的にシートのサイドがカットされていること。このことでトーションとフレックスをバランスよく引き出し、力強さの中にもしなやかさを出している

  • スキートップの形状

    チタンシートを部分的にカット
    しなやかさと力強さを両立

    トップの形は単なるデザインではない。角づけをしてスキーをたわませたときに、有効エッジが長くとれるように設計されたものだ。このことでスキーの安定感やグリップ力が向上する。角づけを緩めると反り上がったトップ部分の有効エッジは外れるので、切りかえはスムーズ

  • ダイアゴテックス

    カーボンを編み込んだシートで
    軽さの中にも強さを実現

    スキーのトーションを強くするために、軽くて引っ張り強度のあるカーボン素材を使用。45度に編み込んでシート状にし、スキー全面に敷いている。SCプロ、RCプロにはシートは1枚だが、CTはシートが2枚入っており、より反発力のある強いスキーに仕上がっている

  • M/Oプレート

    トップ部分のみパーツが独立
    スキーのしなりを引き出す

    従来のプレート「カーブブースター」はセパレート型だったが、今回は新たに一体型の「M/Oプレート」を開発。安定性を高める一方、ほどよいフレックスを引き出すために、トップ部分だけを独立したパーツに。スキーが非常にしなりやすくなり、コンパクトなターンが描ける

高瀬慎一
マテリアルストーリー

Shinichi TAKASE × FISCHER

たかせしんいち●1977年生まれ。富山県出身。高校時代にインターハイを制覇。約10年のブランクを経て現役復帰し、競技と基礎の両方で活躍する。「僕がフィッシャーを履き続ける理由は、ひとえにモノがいいから。誰が乗ってもタイムが出るような、いいスキーをつくる、そこに徹しているんです。実際、切れと走りはずば抜けている。フィッシャーがあってこそ、今の自分の滑りがあると思っています」

限りなくレーシングに近い、驚きの乗り味

乗った瞬間「これはいい!」まるでSLのようなスキー

もはやレースと一般のモデルに差はないし、差をつける必要もない――。

今回のRC4リニューアルを受けて、そう語ったのは、高瀬慎一だ。現役復帰以降、長くフィッシャースキーを愛用してきた高瀬は、一般モデルと競技モデルがかけ離れていることに、もどかしさを感じていたという。

しかし、生まれ変わったRC4は、まさに高瀬がずっと待ち望んでいた通りの、見事な進化を遂げていた。「競技はやらないけど、競技のような切れや走りを求めるエキスパートスキーヤーは、日本にはたくさんいると思うんです。RC4がリニューアルされたことで、そういうスキーヤーの皆さんがフィッシャーを選びやすくなったと思う。僕も薦めやすくなりました」

従来のモデルとの大きな違いは、何といっても安定感だ。「SCプロ、RCプロに実際に乗ってみると、これまでとの差は歴然。プレートが変わったことで、特にターン後半の安定感が格段に上がっていると思います。軟らかいけどたわみ過ぎることがなく、プレートにしっかりとためをつくって抜け出せる。これだけ力のロスが少ないと、それほどパワーがないスキーヤーでも、楽に曲がれるのではないでしょうか」

高瀬が絶賛するのは、最も張りの強い、CTだ。「乗った瞬間、これはいい!と思いましたね。メタルの上にカーボンのシート(ダイアゴテックス)が2枚、重ねてあるんです。だから、剛性がすごく強い。レースのSLとほとんど変わらないくらい。今までのフィッシャーにはないスキーですね」

一方、機種名に〝プロ〟がつかない「SC」「RC」というモデルには、操作性に優れたプレート「Mトラック」が搭載されている。「求める滑りや好みで選んでほしい」と高瀬は語る。

清澤恵美子
マテリアルストーリー

Emiko KIYOSAWA × FISCHER

きよさわえみこ●1983年生まれ。神奈川県出身。アルペンレーサーとして世界を舞台に活躍。2018年に現役を引退した。「フィッシャーは自分にとってすごく相性のいいスキーなんです。27歳でマテリアルチェンジして、1年目にワールドカップで結果が出たので。当時フィッシャーに変えた選手はこぞって成績を出していました。今でも、こうして新しいモデルに乗るたびに思いますね。やっぱり、いいスキーだなって」

競技モデルのような切れ味を、肌で感じた

ターンtoターンがとにかくスムーズ

では、レーシング寄りに生まれ変わったRC4を、アルペンレーサーはどのように感じているのだろうか?「一般のエキスパートモデルというと、硬さが劣るとか、切れ味が足りないとか、そんなイメージが正直ありました。でも、このスキーはまったく違う。ちょうどバーンが硬かったのもあって、びっくりするほどキレキレでしたね!」

そう話すのは、元ワールドカップレーサーの清澤恵美子だ。レースモデルに引けを取らない切れ味が、肌で感じられたという。それでいて、強い圧力にスキーが跳ねてしまうことは、一切ない。「ターンtoターンが、とにかくスムーズ。気持ちよかった!」。清澤は息を弾ませて、そう語った。

今までのRC4と比べて、どこが進化したのだろうか。清澤が特に強く感じたのは、しっかりとした足場があること。「体を傾けるのって、足場がないと怖いんです。でも、このスキーは足場があるから、内傾がとりやすい。エッジの角度をつけられるので、スキーがしっかりとたわんでくれます。SCプロはコンパクトなターンが描けると思いますし、RCプロはターンとターンの間の走りがしっかりと感じられるスキーだと思います」

根本風花
マテリアルストーリー

Fuka NEMOTO × FISCHER

ねもとふうか●1994年生まれ。東京都出身。幼少から競技に打ち込み、大学卒業を機に基礎スキーに転向。昨年の技術選では女子総合11位に。「フィッシャーとの出会いは高校生のとき。ポールのある試乗会でレーシングのモデルを履き比べたんです。滑りをビデオに撮って、試しに家でタイムを計ったら、一番速かったのがフィッシャーでした(笑)。それからは、ずっとフィッシャー。大好きなスキーです」

一方、若手の選手にとっても、新しいRC4の乗り味は新鮮だったようだ。「とにかく走るスキーが好きで……」と高校時代からフィッシャーを履き続けている根本風花。レーシングの系譜を受け継ぐこのRC4に、確かな手応えを感じたという。「やっぱり不安がないことが一番ですね。SCプロもRCプロもそうですが、きれいに深いターンが描けて、やさしく抜けていく感じ。滑りやすいですね。私の好きなフィッシャーの感覚です」。

フィッシャーのスキーにほれ込み、その特性を知り尽くす4人のプレーヤーが、それぞれに語ってくれた、新生RC4の手応え。競技モデルと一般モデルの壁を取り払う、今までにないエキスパートスキーの誕生が、日本のスキーシーンに新風を吹き込んでくれそうだ。

文:佐藤あゆ美 / 写真:黒崎雅久