今年の技術選で、最終種目のスーパーファイナルに5人の選手を送り込んだ、フォルクルデモチーム。
その躍進の根元には、プロダクト側との強い信頼関係があった。
デモチームとプロダクト側とのやりとり、そこから生まれた「レースタイガー デモ」シリーズの特徴をレポートする。
選手は少しでも上を目指すために、自分に合った性能を求める。プロダクト側がそのリクエストに応え、両者の思いが合致するのが理想だが、ドイツに本社を置くフォルクルの場合、その開発担当者とデモチームの関係はどうなのか。フォルクルデモチームのプレーイングコーチを務める柏木義之に聞いた。
「たとえばプレートを変えるとか、ビンディングを変えるとか、スキーのプロフィールにしても、選手のリクエストにはできるだけタイムリーに応えてくれます。プロダクトに関するレスポンスが早いので不満はまったくありません」
年に一度の合宿を兼ねたスキーテストが、本社の開発担当者と、選手の重要な意見交換の場となる。それは、けっして選手からの一方的な要求の場ではなく、ときには開発担当者から、新しいチャレンジに対する意見を求められることもある。なぜなら、彼らが、日本で行なわれている「技術選」という競技に理解を示すとともに、プレーヤーとしての彼らの感性を信用しているからだ。
「本社も、僕らデモチームに関心をもってくれていて、その存在を理解してくれていると感じます。こちらからのリクエストに対しても、できるだけ応えようとしてくれて、スキーテストの際には僕たちのためだけに、何台か用意してくれるのです。その仕事ぶりに対して、素直にすごいなと思っています」
実際に技術選で使用するスキー以外のモデルに関しても、プロダクト側から意見を求められることがあるという。それは、中上級者向けのモデルであったり、ときには、初級者向けであったりもする。
「デモチーム用のものだけではなく、いろいろなレベルのスキーに対して意見を聞かれます。そうしたとき、かならず担当者に聞くのは、このスキーはどのレベルをターゲットにしたものか? ということです。切れる、切れない、動かしやすい、動きにくい、といった性能も大事ですが、本当に大切なのは、そのスキーがターゲットとするスキーヤーに、ちゃんと受け入れられるかどうかなんです」
技術選プレーヤーであると同時に、スキー教師である彼らは、自らが履くスキーと同様に、生徒が履くであろうスキーにも妥協することはない。日本という、ある意味で特殊なマーケットにおいて、中上級者がどんなスキーを求めているのか、どんな性能が彼らの上達につながるのかを常に考えているのだ。
「自分の履くスキーをテストするとともに、スキー教師として、生徒さんに履いてもらうことも想像しながら、あらゆるレベルのスキーをテストしています。生徒さんにも満足してもらいたいから、その作業はまったく苦になりません。むしろ、テスト自体を楽しんでいます」
そうしたフォルクルデモチームによる入念なテストを経て、来季も新たなモデルが登場する。それぞれに柏木がどんなことを感じているのかを聞いてみた。
「2019/20のニューモデルに関しては、レースタイガー GSデモ、SLデモ、SXデモともに、それぞれのターゲット・レベルに合った、高い性能を備えていると思います。GSデモはワンランク上のスピード域にチャレンジすることが可能ですし、SLデモは高い回転性能とスイングウエイトの軽さで、キレと走りを体感できる一台になっています。またSXデモは、操作性が非常に高く、ロング、ショート、コブまでこなせるオールラウンドなモデルに仕上がっていると思います。自分のレベルをしっかりと見極めて、ベストな一台を選んでもらいたいですね」
フォルクルの強みは、技術選を頂点とした、日本における基礎スキーというジャンルを、本国の作り手がしっかり理解しているというところだろう。
これは前述したように、柏木義之をはじめとするフォルクルデモチームが、スキーテストの場で徹底的にプロダクト側と話し合い、お互いのスタンスを理解する努力をしてきたからこその結果だ。
こうしたデモンストレーターと、プロダクト側の共同作業から生まれたのが、ジャパンセレクション「レースタイガー デモ」シリーズだ。
サイズ(cm)/ラディウス(m):170/17.1、175/18.3、180/19.4 サイドカット:114-69-97mm
独自のロッカーシステムに絶対の自信をもつフォルクルは、「レースタイガー デモ」シリーズにも採用している。「レースタイガー GSデモ」と「レースタイガー SLデモ」には、トップ部分がせり上がったチップロッカー形状を、「レースタイガー SXデモ」には「XTDチップ&テールロッカー」と呼ばれる、ロッカー形状のより長いものを採用している。
また、ロッカー形状のメリットを最大限に生かしつつ、より性能をアップさせるために、新たなテクノロジーも注ぎ込まれた。それが「UVO・3D」と「3Dグラス」だ。ロッカー特有の操作性の良さ、ターン導入のしやすさはそのままに、「UVO・3D」の採用で、確実なトップの押さえを実現し、「3Dグラス」で、さらにセンターのたわみを引き出す。こうしたテクノロジーによって生み出される乗り心地について、柏木義之はこう語る。
「3Dグラスによって生み出されるセンター部分の軟らかさが、ロッカーの良さをさらに引き出していると思います。ターン導入がしやすく、弧の深さによって滑りをコントロールできる。そして、センターがたわんだときのトップのばたつきは、新たなUVO・3Dが安定させてくれる。レースタイガー デモシリーズは、テクノロジーの組み合わせによって、サイドカットやラディウスの数値には表れない、コントロール性能を体感できるスキーだと思います。操作の仕方によって、スキーの反応は面白いように変わるので〝踏めば応えてくれる〟といった感じですね」
「ロッカー」「UVO・3D」「3Dグラス」は、三位一体となって「レースタイガー デモ」シリーズの乗りやすさを支えていると言えるだろう。
「レースタイガー GSデモ」は、ロッカーの良いところを十分に引き出し、「3Dグラス」と「UVO・3D」との相乗効果で、操作性の高い、本格的な大回り用のモデルとなっている。しっかりと雪面を捉え、トップがばたつくこともない。高い安定性を誇り、狙いどおりのラインをトレースできる一台だ。
「レースタイガー SLデモ」は、最も日本人向きのモデル。ショートターンに適したフレックスのパターンにより、高い操作性とスムーズなターンの導入を実現している。シャープな弧を描くことも可能だが、ポジションはそれほどシビアではなく、オールラウンドにも使える一台といえるだろう。
「レースタイガー SXデモ」は、スキーのたわみをコントロールできる新感覚のオールラウンドモデル。「XTDチップ&テールロッカー」の採用により、ロング、ショート問わず、また悪雪でもスキーが走る軽快さを感じられる、エキスパートのための一台と言えそうだ。
デモチームとともに、研さんを重ねて生み出された「レースタイガー デモ」シリーズ。これまで以上に日本のニーズを意識して生み出された3台は、日本のスキーヤーの足元をしっかりと支えてくれるに違いない。
サイズ(cm)/ラディウス(m):155/11.0、160/11.8、165/12.6、170/13.4 サイドカット:127-68-103mm
サイズ(cm)/ラディウス(m):163/14.0、168/15.0、173/16.0 サイドカット:125-74-104mm
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