スキー情報総合サイト スキーネット:SKINET

グループ・ロシニョール
チーム一丸となって挑んだ技術選

コロナ禍で、3日間に短縮されて行なわれた、第58回全日本スキー技術選手権大会。
大会側の準備はもちろんのこと、選手にとっても、これまでにない難しい対応を迫られた大会だった。
目まぐるしく変化する苗場の雪、設定された難度の高いバーンも選手を悩ませた。
ここでは、一丸となって大会に臨んだグループ・ロシニョールチームの選手に、その胸の内を聞いてみた。
自らの滑りについて、チームについて、そしてマテリアルについて。

男子総合11位
青木 哲也

Tetsuya AOKI

優勝を目指した戦いの中で味わった苦しさ

今回はもちろん、優勝を目指していました。そういう意味では、すごく苦しい大会でした。それほど緊張を感じたわけではなかったんですが、やっぱり練習とは違う何かがあったように思います。

そんな中、予選2日目の総合滑降は手応えのあった種目でした。バーンはかなりハードでしたが、1日目の大回り系種目で大きく順位を下げていたこともあって、ふっきれた状態で攻めの滑りができたと思います。

リベンジのために、自信をもってスタートに立つべく、自分を追い込むことも必要だと感じています。

あおきてつや●1981年9月18日生まれ。新潟県糸魚川市出身。2001年より技術選に参戦し、2011、2018年自己最高位の7位を記録。繊細なスキー操作を武器に、その後もつねに上位をキープしている。SAJナショナルデモンストレーター認定7期。AokiO ski school代表

男子総合25位
鈴木 翔

Tsubasa SUZUKI

自分のやりたいことがすべてかみ合った

自分がやりたかったことが、うまくかみ合っていたなというのが正直な感想です。技術選は3回目の出場ですが、これまでは成績が出なくて、なかなか北海道予選を通過できませんでした。それが今回、スーパーファイナルに残って総合25位。これは上出来です。

ひとつ、これがうまくいったのではないかという取り組みがあります。それは、他の選手の滑りや点数ばかり気にするのをやめて、自分の滑りだけに集中したことです。そのため変なプレッシャーがなくなりました。

すずきつばさ●1995年10月19日生まれ。北海道札幌市出身。スキー歴12年。アルペン競技の経験はなく、北海道のジュニア技術選で滑りを磨く。第53回、第54回全日本スキー技術選手権大会決勝進出。第58回全日本スキー技術選手権大会で初のSF進出を果たした

男子総合49位
本田 佳祐

Keisuke HONDA

100%の実力を発揮できていれば

初日から、全然乗れていませんでした。雪質の変化に対するアジャストが難しかったですね。また、身体も何かおかしくて、トレーナーにいろいろ調整してもらって、やっと決勝からスキーが踏めるようになりました。

決勝の2種目は、気持ちがふっきれたこともあり、思った通りのラインが描けたので、悪くなかったと思います。

今回は、実力を100%出しきることができなかったことが悔やまれます。より100%に近い力を出した選手が上位にくると思うので、次回はさらなる高みを目指したいと思います。

ほんだけいすけ●1983年9月30日生まれ。新潟県妙高高原出身。幼少の頃よりスキーに親しみ、高校卒業後、地元のスキースクールに勤務する傍ら、技術選への挑戦を開始する。2018年、ナショナルデモンストレーターに初認定。2019年3月の第56回全日本スキー技術選で自己最高となる男子総合21位を記録した。妙高スノーアカデミー校長

女子総合39位
上野 桃子

Momoko UENO

楽しめた男子リーゼン

コブは得意種目ですし、成績も良かったんです。ただ、私の中では一番くやしい種目になりました。転んだり、ミスしたりしている人が多くて、それを見てちょっとビビってしまい、守りすぎてしまったのです。自分の強みになる種目なので、次はもっと攻めたいです。

男子リーゼンの総合滑降は、納得のいく一本でした。怖いなとは思いましたが、整備の行き届いたセパレートされたバーンを思いきって滑れるなんて、技術選以外にないなと思ったら楽しくなってきて。恐怖心を忘れて、思い切り滑れたのが良かったと思います。

うえのももこ●1994年2月7日生まれ。東京都出身。5歳から典型的なファミリースキーでスキーに親しむ。2010年、高校1年時にJOCジュニアオリンピック(モーグル)で決勝進出。2014、2015年、2年連続で岩岳学生大会2位を記録。同年、学連から技術選初出場。5度目となる今年はデモ選にも出場し、SAJデモンストレーター初認定を受けた

女子総合50位
新井 祥子

Sakiko ARAI

思い通りの滑りができなかったくやしさ

男子リーゼンがすごく難しかったですね。雪質は時間帯によって変わるし、視界が悪く、斜面状況がわからない状態でした。手探りだったので、怖さもありました。

ミスをしたり、スピードに乗れなかったり、思い通りに滑れた種目はありませんでした。コブはまあまあで、決勝に向けて徐々に調子は上がったのですが、満足のいく滑りはできませんでした。

今後の目標は20位以内。スピードに慣れるためにゲートトレーニングにもトライして頑張りたいと思います。

あらいさきこ●1992年10月1日生まれ。東京都出身。幼少の頃からファミリーでスキーに親しむ。大学から基礎スキーを始め、3年時に技術選初出場。2019/2020シーズンからロシニョールチームに参加。2015年から技術選に連続出場。東京都スキー連盟所属

女子総合62位
新井 翔子

Shoko ARAI

難しいバーン状況に跳ね返されて

バーン状況が難しくて、とくに雪面硬化材で固められたコブにやられました。もともとコブは苦手種目で、さらにカリカリになっていたので、歯が立ちませんでした。やわらかい雪ならよかったんですが。

大回り系の種目は、ある程度練習でやってきたことができました。怖さはありましたが、ターン前半の捉えとか、スキーの走りは表現できたのではないかと思います。

硬いバーンやコブへの対応力をもっと磨いて、次へ挑戦していきたいです。

あらいしょうこ●1988年6月10日生まれ。東京都出身。幼少の頃からファミリースキーでスキーに親しむ。2016年、社会人として技術選初出場。2019/2020シーズン、ロシニョールチームに在籍。現在、歯科医師として働きながら、休日にスキーの練習に励んでいる。千葉県スキー連盟所属

女子総合67位
新谷 起世

Yukiyo SHINTANI

続ける以上はさらに上を目指して

雪への対応がうまくできませんでした。技術選の事前合宿にも参加したのですが、問題を解決できないまま大会に突入。予選落ちしてしまいました。

練習ではうまく滑れていて、手応えもあったんですが、実際に苗場に来てみると雪が難しくて、やってきたことが出せない。くやしかったですね。

これまでの最高順位が24位なので、やる以上はそれを更新したいと思います。

しんたにゆきよ●1985年生まれ。徳島県美馬市出身。アルペンスキーで全国学生岩岳スキー大会で3年連続2冠達成。2008年から2021年まで全日本スキー技術選手権に連続出場。現在は四季を通じてスキーとグラススキーのコーチとして活躍中。グラススキーの戦績は、FIS通算48勝。ワールドカップ10勝。世界選手権2勝。(有)ダイチ所属

男子総合80位
穴田 玖舟

Kishu ANADA

続ける以上はさらに上を目指して

なかなか自分の滑りができませんでした。現地には、大会の3日前くらいに入ったのですが、ちょっと時間が足りなかったですね。

ただ、難しいバーン状況の中でも、自分が練習してきたターン技術は、なんとか表現できたかなと思います。

初出場の技術選。戦い終えて、あらためて技術選、スキーはおもしろいなと思いました。来年は、スーパーファイナルに残れるような滑りをしたいと思っています。

あなだきしゅう●1998年7月16日生まれ。北海道札幌市出身。3歳から父の影響でスキーを始め、高校生までアルペン競技に没頭する。昨年は学連で技術選予選を通過するも、コロナの影響で大会は中止となり、今回が初挑戦

このチームだからこそ!

選手の立場から離れて、落ち着いて技術を見られるコーチと、まだ選手の感覚が残っているコーチ、それぞれの視点からアドバイスを受けられるのが、ウチの強みだと感じています。(青木哲也)

チームの良さは、コーチと選手の距離感が近いということです。コーチから言われたことにも、自分はこうしたいと言える、これが大きいと思います。(鈴木 翔)

ヘッドコーチの太谷祐介さんは、デモコーチでもありますから、より実践的な指導をしてもらいました。また、ジャッジを務めていた佐藤麻子さんからは、ジャッジの観点でアドバイスをもらっています。(本田佳佑)

今年からの参加ですが、アットホームな雰囲気にびっくりしました。優勝経験のある佐藤麻子さんから、戦い方を教えてもらえたことがプラスになりました。(上野桃子)

移籍した際、自己紹介の場を設けていただいて、チームに溶け込めるように気を使っていただきました。すごくいい雰囲気だなと感じました。(新井祥子)

昨年、GMの太田具英さんから、アルペン経験がない私に「翔子はスタートが壊滅的に下手だ」とキツイ一言をもらいました。でも、なかなかそういうのって言ってもらえないなと。助けられたといまは思っています。
(新井翔子)

新しい選手にも優しく、チーム一丸となってやっていこうという雰囲気がすごくよくて、居心地のいいチームです。(新谷起世)

今年から参加していますが、チームの雰囲気は、とにかく明るい。トップ選手でも分けへだてなく、技術に関して言い合えるところが素晴らしいと思います。(穴田玖舟)

このマテリアルだからこそ!

スキーの調子は抜群でした。余計な挙動が少なく、雪面にビターっと張り付いている感じです。返りすぎることもなく、安定感も高かったです。(本田佳佑)

とにかくしなやかですね。ふつうはたわみが大きくでるとブレーキ要素が出やすくなるんですが、ロシニョールのスキーはたわみながら前に進んでくれるんです。(青木哲也)

今回躍進できたのは、ロシニョールのスキーによるところが大きいと思っています。とくにショートターン系の種目では、スキーが抜けてしまいそうな場面でもしっかりグリップしてくれて、本当に助けられました。(鈴木 翔)

走りや抜けをすごく感じるスキーです。レース経験のない私でも、捉えの速さやグリップ力を感じます。(新井祥子)

2年前、全部のメーカーを試してみて、たどり着いたのがロシニョールでした。ちゃんと乗れば思い通りに動いてくれる。難しさもありますが、理想的なスキーだと思っています。(新井翔子)

ディナスターのスキーはずらせるし、切れる。どちらかが飛び抜けているわけじゃなく、どちらもいける扱いやすさがあります。(新谷起世)

僕はディナスターを履いていますが、トップがしなやかでテールに張りがあるので、素早く雪面を捉え、スキーを走らせることができる、安定感の高いスキーです。(穴田玖舟)

これまでの積み重ねが大きな飛躍につながる

グループ・ロシニョールヘッドコーチ

太谷 祐介

おおたにゆうすけ●1976年生まれ。長野県出身。3歳からスキーを始め、中学卒業と同時に4年間、アメリカにスキー留学。帰国後は中央大学へ進学、SAJナショナルデモンストレーターを3期務め、2011年、インタースキー日本代表に選出される。2016年より、白馬八方尾根スキースクール校長に就任

青木選手に関しては、優勝を狙えるところまできているんじゃないかと思っていました。甲信越予選での2年続けての優勝など、実力には十分すぎるものがありました。あとは戦い方、プレッシャーへの対応というところだと思います。本人がいちばんくやしいと思いますが勝負ごとですから。勝つものがいれば、負けるものもいるということです。

次世代の台頭

今回、北海道の鈴木翔が大きく躍進してくれました。また、女子では石井理紗、上野桃子が活躍、上野はSAJデモにも認定されました。そういった次世代を担う選手が育ってきたことは、今大会の大きな収穫だと思っています。

技術選前の合宿を見ていて、まだまだこれからだろうなという選手が、じつは大会が始まってみると、飛躍的にいい点数を出したりしているんです。石井理紗は予選の小回りで種目別2位を記録しています。浜下玲音も、コブで転ぶまではいい位置をキープしていました。

ここでチャンスをつかめば自信につながります。得意な部分と不得意な部分、一つ歯車がかみ合えば、不得意なところも一気に輝きに変わります。グループ・ロシニョールは、大化けする可能性を秘めたチームだと思います。

写真:眞嶋和隆、黒崎雅久 / 文:齋藤隆久