国産スキーメーカーのファクトリーデモチームとして、長きにわたって技術選の名シーンを彩ってきたオガサカチーム。名機TCシリーズを操る名手たちの競演は、常にスキーファンの熱い視線を集めてきた。
そして2022年、新星の誕生、レジェンドが見せたの滑りなど、死角がない強さを見せつけてくれたオガサカチームの戦いを振り返る。
技術選シーンを常にリードしてきた名門チームに所属すること。それは選手にとって大きな誇りのはず。4日間の戦いを終え、それぞれが次のシーズンに向けて、すでにスタートを切っている
「本当に私がここに居ていいのかな? そんな気持ちでウィニングマッチのスタートに立っていました……」
スーパーファイナルを終えた時点で3位に15点差の2482ポイントで2位につけた神谷来美は言う。
「1位の栗山未来選手とは11点離れていたので、さすがに逆転は無理だと分かっていましたが、それでも2位で最終種目まで進めたのは、本当に信じられないことでした。でも今回は得意の小回り系種目で2回ラップを取れたり(決勝とスーパーファイナルで1回ずつ)、去年よりも全体的に良い評価を頂けていたので、ウィニングマッチでは、自分を信じて思い切り攻めることができました」
やや湿った雪が降りしきる名木山中カベ、神谷はスキーを深く回し込んだミドルターンから落差を生かしたシャープなショートターンへと流れるようなリズム変化を見せ、この種目トップの285ポイントを獲得し、合計2767ポイントで女子総合準優勝を決めた。4日間を通して、不整地種目を含む小回り系種目では1位3回、2位1回、3位2回。大回り系種目では6位、10位、12位を一回ずつ。昨年初出場で女子総合12位と鮮烈なデビューを飾ったとはいえ、まさかここまでの活躍をするとは……、そう感じたファンも少なくなかったはずだ。
「一番印象に残っているのは決勝の『小回りスペース規制(急斜面ナチュラル)』。自分の個性が出せる種目だと思っていたし、ここで1位を取れたことで勢いに乗れた気がします。大回り系種目はまだまだですが、それでも今回の滑りには大満足。私は競技経験がないので、これからはスピードの次元を上げたりして大回りでも点を稼げるようになりたいです。TCというスキーの良さも年々分かってきて今では100パーセント信頼しているので、さらに使いこなせるようになりたいです!」
まだ大学生の神谷だが、間違いなく今大会で高い能力をアピールしたと言ってよいだろう。それだけでなく、「まだまだ伸びしろがあるはず」。そんな可能性を感じさせる戦いぶりだった。
北海道のジュニア技術選で活躍し、現在はスポーツトレーナーを目指して大学で勉強中だという神谷来美。今大会では初日から会場を沸かせるスーパーパフォーマンスを連発し話題に。その華のある滑りが今後どう進化していくか楽しみだ
「ジャッジの観点をすべて分かっていたか? それが今大会での自分にとって大きな分かれ目だった気がします」
昨年の7位から大きく巻き返し、男子総合2位を記録した丸山貴雄。オガサカチームのリーダー格であり長年技術選シーンをけん引してきたレジェンドは、自身の戦いをそう語った。
「決して調子が悪いわけじゃない、ただジャッジが求めるものに合わせられていないというか、何か違うことをしてしまっているのでしょうね……」
予選から大回り系種目が振るわなかった丸山は、決勝の『大回り(急斜面ナチュラル)』で267ポイントの56位……。だが、『小回り(急斜面不整地)』では286ポイントでラップ、大会3日目にしてエンジンがかかってきたレジェンドの技にギャラリーは沸いた。
「スキーを雪面に貼り付けるようにコンタクトさせ、深い回し込みを見せられたのがよかったですね」
そしてスーパーファイナル、『小回りフリー(急斜面不整地)』で285ポイントでラップと底力を見せ、2位で進出したウィニングマッチでも、285ポイントをたたき出してラップ。それはまさにの滑りとも呼べるような圧巻の演技だった。
「いろいろな意味で、43歳にして勉強になった大会でした。来シーズンに向けてまた頑張ります」
挑戦を続けるレジェンドの戦いは多くの人に感銘を与えてくれた。
大回り系種目では、やっていることとジャッジの観点がかみ合わず、苦しい戦いだったと言う丸山貴雄。しかし、不整地で見せてくれたパフォーマンスは、レジェンドここにあり!といった圧倒的完成度だった
ディフェンディングチャンピオンの春原優衣にとって決して楽な大会ではなかったはずだが、その表情は終始明るく、しかも清々しさがあった。
「結果については仕方ないなとしか言えません。たとえ点が出なくても私がふさぎ込んだ雰囲気を出してしまっては絶対にいけないと思っていました。ゴールドビブの責任感というと、ちょっと偉そうだけど(笑)」
連覇を期待され、チーム内でも女子のリーダー的ポジションである春原が、今大会では得意の大回りで思うように点が伸びず、それがネックになった。
「決勝の『小回りスペース規制(急斜面ナチュラル)』では、点数こそダメでしたが自分らしさを出せました。でも、大回り系が全部ダメだったのが残念。何か失敗したわけじゃないし、自分が思う滑りはできたけど、結果としてジャッジにアピールすることができなかった。ただ、自分の滑りは出し切れました。だから、少し悔しいけど悔いはないんです。それに貴雄さんも準優勝で意地を見せたし、神谷選手もすごかった。チームの一員としてうれしいのと同時に、私も常に進化する春原優衣じゃなきゃいけないなって」
ゴールドビブの誇りを忘れずに戦った彼女は最後まで爽やかだった。
「去年みたいな力強さの表現は少し抑えて、繊細な雪面タッチや操作の正確さを意識した」と語る春原優衣。爆発的なポイントこそ出なかったが、オールラウンダーとしての能力の高さを、改めて誰もが知ったに違いない
108位。昨年初出場で新人賞を獲得し、今大会でも大きな期待が集まっていた安井章博が予選『小回り(急斜面ナチュラル)』で記録した順位である。
「昨年新人賞を頂いたことでプレッシャーがある中、この種目は苦しい結果でした。でも気持ちを切りかえなきゃ何も始まらないと、大回りでは思い切って攻めて5位をとれたので、その後はまあまあ波に乗れた気がします」
40位で予選通過した安井は、決勝の『大回り(急斜面ナチュラル)』で279ポイントをたたき出し、高いポテンシャルを見せつける。
「大回りは得意でしたし、良い評価を頂いていたので、迷いなく攻められました。苦手な不整地種目も17位で、自分としてはそこそこの結果でした」
決勝11位でスーパーファイナルに進出した安井だったが、得意の大回りで13位、不整地種目では23位と、本来の調子が出せず、結局ウィニングマッチへの進出はかなわなかった。
「最終成績は男子総合14位。挑戦2年目としては悪くないのかもしれませんが、自分としては満足できていません。課題はやはり不整地。スキー操作の正確さや器用さが、先輩たちと僕とでは根本的に違いますから」
予選の小回りで低迷するも、意地を見せて上位に食い込んだ安井。その粘りある戦いぶりが、より大きな結果に結びつく日もそう遠くないだろう。
北海道富良野で高校生までアルペン競技に打ち込み、大学で技術選に転向、初出場の昨年は男子総合20位を記録し新人賞を獲得した安井章博。大回りで見せる切れと走りは圧巻。不整地種目を攻略すれば一気にジャンプアップするだろう
純国産スキーメーカーとして長い歴史を誇り、全日本スキー技術選には、全日本基礎スキー選手権の時代から多くの選手に愛用されてきたオガサカ。厳選されたウッドコアにこだわりながら、ギミックに頼ることなく常にスキーの本質的な性能を追求してきた。
現在、テクニカルコンペティションにフォーカスしたスキーとして絶大な支持を集めているのがTCシリーズだが、このモデルの開発には丸山貴雄や春原優衣といったオガサカチームのトップメンバーが現在進行形で関わっている。またレーシングチームメンバーの田島あづみらからも意見をもらい、
より高速化する技術選の戦いにフィットするスキーとして作られている。
このシリーズを愛用する丸山貴雄は、
TCシリーズは、年々剛性感を高めレーシングモデルに負けないような『強く速い』スキーに仕上がっています。もちろんオガサカスキーの特徴である『扱いやすさ』はそのままですし、攻めたら攻めただけ応えてくれるという意味で、あらゆる状況で頼れるスキーだと言えます」
と語る。現在、TCシリーズにはユースモデルやジュニアモデルまでラインナップされ、テクニカルコンペティションを楽しむすべてのスキーヤーに対応できるようになっている。
Made in JAPANの誇りとクオリティを大切にするオガサカが、その技術を結集して作り上げ、トッププレーヤーから絶大な信頼を獲得している技術選対応モデル。
LENGTH 180 / 183cm
SIDECUT (104.7 / 104.3)-65-(87.7 / 86.3)mm
RADIUS 23.1 / 24.8m
WEIGT½ 1,016g/m
たわみ出しが早く、しかもバーン状況に左右されないスムーズな走りが魅力のロングターンモデル。
LENGTH 162 / 167 / 172 / 177cm
SIDECUT 111-67-94mm
RADIUS 15.9 / 17 / 18.1 / 19.2m
WEIGT½ 1,035g/m
ミドルターンを得意とし、センター幅がやや広いため、悪雪や新雪にも抜群に強いオールラウンドなモデル。
LENGTH 155 / 160 / 165 / 170cm
SIDECUT 119-65-102mm
RADIUS 10.6 / 11.3 / 12.1 / 13m
WEIGT½ 970g/m
スキー全体の剛性感が高く、整地のハードバーンから不整地まで、頼もしく雪面を捉えてくれるショートターンモデル。
LENGTH 170 / 175cm
SIDECUT (108 / 105.7)-65-(91 / 88.7)mm
RADIUS 18 / 21m
WEIGT½ 966g/m
ジュニア技術選(ユース)の大回り用スキーとして開発。高速域でも安定感が高く、リズム変化でも雪面コンタクトが取りやすい。
LENGTH 135 / 140 / 145 / 150cm
SIDECUT 114-64-97mm
RADIUS 8.9 / 9.7 / 10.5 / 11.3m
WEIGT½ 828g/m
ジュニア技術選の小回り用として、小学生高学年から中学生を対象に開発。操作性が高く、基本的な運動を習得しやすい。
問い合わせ=オガサカ☎026-226-0678 https://ogasaka-ski.co.jp
写真:黒崎雅久、渡辺智宏 / 文:近藤ヒロシ
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