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ブルーの進化
Evolution of blue

2022年、記念すべきオリンピックイヤーに創業75周年を迎えたサロモン。

小さな町工場から、世界的なアウトドアスポーツブランドへ。

大きな飛躍を遂げたサロモンが、この節目の年に、

名機「S/RACE」を大胆にモデルチェンジ。新たなテクノロジーを導入する。

極めたのは、均質なたわみ──。いっそう加速するスキーへと進化した、

新生「S/RACE」とは?  その真価に迫る。

足元がしっかりしていて、エッジの食いつきがいい。ハイスピードでも非常に安定するスキー

ソールには、リニューアルされたロゴマークと虹色のグラデーションカラーをデザイン

新たなコンセプトを導入 さらに加速するスキーへ

鮮やかなブルーのトップシートに、リニューアルされたブランドロゴ──これは、来たる2022−23シーズンに向け、装いも新たに大きくリファインされた、サロモンのレーシングスキー「S/RACE」シリーズの、新しいデザインだ。

「S/RACE」といえば、サロモン独自のテクノロジー「エッジアンプリファイア」が搭載された、文字通りの看板機種。その優れたエッジグリップと、オートマチックなターン性能で、トップレーサーから技術選を目指すエキスパートスキーヤーまで、幅広く愛用されてきた。

新生「S/RACE」は、その優れたポテンシャルを引き継ぎながらも、従来とは異なる、全く新しいコンセプトで、持ち味の切れと走りをブラッシュアップ。これまで以上に反応のいい、加速するスキーへと、進化を遂げたのである。

こだわったのは「ベンド」 たわみがターンの質を変える

では改めて、生まれ変わった「S/RACE」とは、どのようなスキーなのだろうか?

「ファーストインプレッションは、エッジがよくかんで、スキーがトップからテールまできれいにたわんでくれる印象。全体にたわむ分、反応もいいので、スキーの抜け、走りというのをすごく感じました」

これはシリーズの上位機種、「S/RACE PRIME」を試乗したときに、佐藤栄一が口にした第一印象のひとことだ。

サロモンが目指したのは、まさにこの推進性、すなわち「減速することなく、スピードを維持しながら自在にターンできるスキー」。そんな質の高いターンを生み出すために、徹底してこだわったのがスキーのベンド、すなわち〝きれいなたわみ〟である。

テールだけがたわむ、もしくはスキー全体がたわむ中、舟底状のたわみのようにポイントが集中してしまうと、スキーの滑走性は引き出せない。そうではなく、いかにスキー全体を均質にたわませることができるか  ──  そこを徹底的に追求し、生み出されたのが今回の「S/RACE」シリーズに搭載された新システム、「ブレードテクノロジー」である。

スキーが気持ちよくたわんでくれて、反応がいい。ターンの抜けがよく、走りが感じられる

スイートスポットが広い しっかり芯を食っている感じ

それはどのようなテクノロジーなのか? 最大の特徴は、トップ側とテール側の2カ所に搭載された、長方形の「ポリマーパッド」。新しい「S/RACE」には、スキーの剛性を出すために、上下2層のチタンシートが組み込まれているが(左ページの図)、その上層のチタンシートにコの字型の切れ込みが入り、そこにポリマーパッドが装着されている()。シートに切れ込みが入れば当然、スキーはたわみやすくなるが、かといってパッドが装着されているため、たわみ過ぎることがない。つまり、このポリマーパッドがスキーのたわみを調整する役割を担い、スキー全体が均質にたわむ構造をつくり出しているのである。

実際に、ターン中のたわみの出方を測定したデータでは、ブレードテクノロジーを搭載したスキーは、搭載していないスキーよりも5%、たわみ量がアップしている。何より注目したいのは、スキーへの圧のかかり方が、ブレードテクノロジーによって大きく変わること。高速になればなるほどターン中に生じるプレッシャーは大きくなるが、ブレードテクノロジーにはこの圧力を「再分配」する働きがある。このため、プレッシャーがどこか1点にかかることなく、スキー全体に均等にパワーが伝達され、その結果、均質なたわみが生み出されるのである。

加えて、ポリマーパッドには振動を吸収する働きがあり、高速ターンでの安定性が高いのも特徴。こういった新しいテクノロジーの機能が、滑り手に何をもたらすのか? 一般エキスパートモデルの「S/RACE SL12」を試乗した井山敬介は、その優れた安定性と操作性を、こう評している。

「ターン中は長いスキーを履いている感じ。でも切りかえのときは、短いスキーを履いている感じ。だから、切りかえ操作は非常に楽なんだけど、ターンが始まると、すごく気持ちよく身体にGがかかるんです」

さらに、井山はこうも話している。

「試乗したときは深雪だったのですが、それでもスキーがたわんで、こんなに足場ができるんだ、と思いましたね。スイートスポットが広いというか、しっかり芯を食っている感じがしました」

パワーが均等に伝わることによって、トップからテールまで、スキー全体を使うことができる。それが高速域や悪雪での高い安定性につながり、スキーが生き生きと動いて、スムーズにターンしてくれるのである。

スキーをトップからテールまで均質にたわませるために編み出されたニューテクノロジー。プレートの前後2カ所に埋め込まれたポリマーパッドが、スキーのたわみを調整すると同時に、雪面からくる振動を吸収してくれる

走りを求めるなら「S/RACE」 操作性を求めるなら「S/MAX」

いいスキーは、スキーヤーのポテンシャルを最大限に引き上げてくれると、佐藤栄一は言う。「スキーは使えば使うほど味が出る。これから滑り込んでいったらどんな化学反応が起きるのか? 非常に楽しみですね」

なお、この新しい「S/RACE」シリーズは、アルペンレーサー・コンペティション向けの「FIS」、技術選アスリート・マスターズ向けの「PRIME」と「PRO」、そしてエキスパートスキーヤー向けの「12」と「10」の5機種がラインナップされている。それぞれにSL、GSモデルが用意され、フレックスの硬さなどに違いはあるが、いずれの機種にも「ブレードテクノロジー」を搭載。均質なたわみがもたらす切れと走りを、ぜひ体感してほしい。

一方、より少ない力でエッジをグリップできる、サロモンのもう一つのキーテクノロジー「エッジアンプリファイア」は、一般エキスパート向けモデル「S/MAX」シリーズが継承。切れや走りを求めるなら「S/RACE」、操作性・扱いやすさを求めなら「S/MAX」というように、目的やに合わせたチョイスが可能だ。

「ターンのしやすさは失われることなく、さらに推進力が増した印象。速さを求めるには、非常にいいスキーだと思う」

写真:渡辺智宏(スタジオ)、黒崎雅久(雪上)/ 文:佐藤あゆ美 / 撮影協力:菅平高原スノーリゾート