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生きるを、感じる。安比高原の2023シーズン

東北のビッグリゾート安比高原が、変化のときを迎えている。
昨年から元ワールドカップレーサーの皆川賢太郎が加わり、
「生きるを、感じる。」というコンセプトのもと、
リゾートの再興を目指して改革を進めているのだ。

2023シーズンの安比高原はどこが変わったのか、
そしてこれからどう変わっていくのか。 皆川を案内役に迎えてお届けする。

皆川と迎える2度目の冬 目指すところ、変えたこと

東北最大級のリゾートとして名高い安比高原が、リゾートとしての再興を目指して少しずつ、しかし着実に歩みを進めている。改革の軸となっているのは、今季のスキー場のキャッチコピーである「生きるを、感じる。」というコンセプト。冬だけでなく、ゆくゆくは1年を通じて人々が集える街へと生まれ変わろうとしているのだ。

この一大改革を先導するのは、アルペンスキー選手として数々の功績を残し、引退後は冬季産業の活性化に尽力している皆川賢太郎。「安比高原に対して抱いたのは、まだまだ手つかずで、すごくきれいな所だなという印象。大きな可能性を秘めたエリアだと思いましたし、この状態からリゾートづくりに携われることに魅力を感じました」――現役時代に数え切れないほどのレースに出場し、世界中のスノーリゾートを見てきた皆川の知識や経験を生かし、リフトパスを一新したり、コースレイアウトにアレンジを加えたり、写真家・蜷川実花氏とコラボしてゲレンデにアート作品を取り入れたりと、まずはスキー場を中心にリニューアルを施したかたちだ。

雪の中を滑ること、景色を眺めること、アートに触れること、大切な人と過ごすこと。こういった楽しみを存分に感じてもらえるようなリゾートを目指している。「スキー場の再生から街づくりまで。実現できたら本当にすごい、と自分でも思うことに、今まさに取り掛かったばかり」──そう話す皆川を中心に進み始めた安比高原の、2023シーズンのトピックスを見てみよう。

皆川賢太郎

みながわけんたろう●1977年5月17日生まれ、新潟県湯沢町出身。アルペンスキー選手として98年の長野五輪から10年のバンクーバー五輪まで4大会連続で出場し、06年トリノ五輪のスラロームで4位に入賞。W杯では05/06シーズンに総合10位を記録するなど第1シードで活躍した。引退後は全日本スキー連盟 競技本部長を務め、国内で10年ぶりにアルペンスキーW杯を開催。21年に(株)岩手ホテル&リゾート顧問兼マウンテンリゾート事業部統括に就任している

四季を通じて心踊る場所へ

ゲレンデで体験できる
3つのNEW

滑走可能エリアが異なる
3種類のリフトパスを導入

今季からリフトパスをエリアで区切ったものに一新。ファミリーにうれしいグリーンパス、クワッドリフト&ゴンドラに優先乗車できるゴールドパスなど、3種類から選べるようになった

写真家・蜷川実花氏との
コラボによりゲレンデで
アート作品が楽しめる

唯一無二の色彩感覚が魅力である蜷川氏の作品を、20基限定でゴンドラにラッピング。ゴールドパスを購入した場合には限定ゴンドラに乗車し、間近でアートに触れることもできる

チケット保有者限定!
ゴンドラ山頂にOpenした
専用ラウンジが利用可能に

ゴールドパスもしくは専用のチケットで利用できるラウンジが、ゴンドラ山頂にオープン。山頂からの絶景とラウンジ内に展示された蜷川氏の作品が、フリードリンクを片手に楽しめる

自慢のゲレンデ品質が
爽快クルージングを後押し!

安比高原は雲が留まりやすく、降雪量や雪質に恵まれるという魅力的な環境をもつ。皆川も「朝イチの1本がたまらない」と太鼓判を押す抜群のゲレンデ品質は、こうした立地のよさと、高い圧雪技術が相まって生み出されている

恵まれた資源を生かし 誰が訪れても楽しい雪山へ

安比高原のゲレンデはもともとある資源の質が高いことから、既存のよさを生かしながらアレンジが施された。「安比は雪が本当にいいんです。ゲレンデ品質にすごく自信があるので、それを存分に楽しんでもらうための工夫をしました」と皆川が話すように、すでに定評のあるグルーミングゾーンに加え、拡充されたパウダーゾーン、そしてツリーランゾーンという3タイプのコース設定で滑り応えをアップさせている。

あわせて、ゴンドラへの乗車と専用ラウンジの利用ができる「アートゴンドラチケット」を新設したり、キッズゾーンを国内最大規模に拡大したりと、ゲレンデ以外を楽しむ仕掛けも満載。スキーをする人もしない人も、大人も子どももたっぷり遊べる空間へと進化を遂げた。
インターコンチネンタル安比高原の客室。シックなカラーで統一された高級感ただようインテリアが、贅沢なひとときを演出する

3タイプのホテルで 選択肢が広がった

スキー場の麓には、黄色い外観が特徴的な「ANAクラウンプラザリゾート安比高原」と、「ANAホリデイ・インリゾート安比高原」という2つのホテルがあるが、昨年からここに「ANAインターコンチネンタル安比高原リゾート」が加わった。

ANAインターコンチネンタル安比高原リゾートは、こだわり抜かれた空間と洗練されたサービスが特徴の、東北初となるラグジュアリーホテル。皆川も「さまざまな目的で安比高原に来られるすべての方々に、滞在を通じて心から満足してもらえる準備が整いました」と話すように、目的や予算などに応じて選べるホテルの選択肢が、さらに広がった。  なお、クラウンプラザは現在リニューアル中で、ホリデイ・インも近日中にリニューアルを予定。滞在の時間をより魅力的に演出するための準備が各ホテルで着実に進んでいる。

1万人が定住できる「街」としてのポテンシャルを秘めた安比高原

街づくり構想のイメージはすでに完成している。リゾートを楽しむ人たちが滞在する別荘地や教育施設なども建てられる計画だ

リゾートの枠を超えた 街づくり構想の実現に向けて

スキー場の再生やリゾートの再興に向けた改革を進める安比高原が最終的に目指すのは、安比高原をひとつの「街」にすることだ。冬だけでなく、1年を通じて人が集える環境を整えるための最初の取り組みとして、インターナショナルスクールの誘致に成功。英国で450年の歴史をもつ名門スクールが、日本国内初の提携校を安比に開校した。今後はここに居住エリアや病院、ウェルネス施設やショッピングモールなどが整備され、豊かな自然環境と質の高い生活環境が共存する街づくりを目指していく。

「ベンチマークすべきはシャモニーだと思っています。あそこは崖に囲まれたエリアではあるけれど、1万人ほどが住んでいて、生活圏があって。避暑地のレベルを超えた立派な街です。安比もそうなっていくべきだと思うし、なれる可能性が大いにあります」――かつてない試みが、今まさに進み始めている。街として活気づく安比高原がどんな姿になるのか、今から楽しみだ。

写真:木下健二 /写真提供:岩手ホテルアンドリゾート