岡田 REXXAMブーツ誕生30周年を記念して、このような時間を設けていただきました。僕のほかには、モーグルを代表して堀島行真選手、そして技術選を代表して水落亮太選手が来てくれています。よろしくお願いします。
堀島&水落 よろしくお願いします。
岡田 まずは2人に、2021/22シーズンのことを聞きたいと思います。堀島選手にとっては、北京オリンピックなどを含め印象的なシーズンだったと思いますが、いかがでしたか?
堀島 オリンピックでようやくメダルを取ることができて、ひとまず安心しました。そして12試合あったW杯の全戦で表彰台にのぼるという、自分のキャリアのなかで最もいい成績を残せたシーズンでもあったので、充実したシーズンだったと思います。
岡田 2度目のオリンピックの舞台は、どうでしたか?
堀島 コースも難しいし、今回もかなり厳しい戦いになると感じていました。ただ、前回大会からの課題として、オリンピック期間の1週間くらいは無理できる身体にしておこうと決めていたので、オリンピック前はあまり無理をせずに過ごしていたんです。だから、多少難しい条件であっても、それまでに温存した力や気持ちをここで出し切ろうと前向きに臨むことができました。実際に試合が始まると、予選の第2エアまではすごく調子がよくて。このままゴールすればいい位置で予選を通過できると思っていました。でも、第2エアで着地に失敗して、予選2回目にまわることになって。
岡田 そうでしたね。でも、第2エアまでは調子がよかったぶん、そのあとも自信を持って滑ることができたのでは?
堀島 そう思いたかったんですけど、調子がいい自信があったのにもかかわらず失敗したことが、自分のことを信じられなくなるくらい大きな出来事でした。だから予選2回目は、オリンピックで滑ったなかで1番緊張しましたね。無事に予選を通過して、メダル争いに絡むところまで行けたときは、正直やりきった感じがあって。最後の1本は、スタート台に立てたことに喜びを感じながら、ゴールまで諦めずに行こうという意識で滑りました。
岡田 ゴールしてメダルが決まって、メダルを受け取ったときはどんな気持ちになりましたか?
堀島 決勝を滑り終えて3位と決まった翌日にメダルセレモニーがあって、そこで初めてメダルをいただきました。新型コロナ感染対策の一環で、メダルをかけてもらうのではなく、自分でかけるというものでしたが、持ってみたら想像以上に重くて。この瞬間にやっと「メダリストになったんだな」っていう実感が湧きましたね。
岡田 メダルを取った本人だけが味わえるものがあるのですね。水落選手は昨シーズンの技術選で9位入賞を果たしましたが、この結果をどう受け止めていますか?
水落 目標としていた順位ではありませんでしたが、昨シーズンは地区予選から調子がよかったので、入賞できてほっとしましたね。持ち味であるスキーの走りを発揮させられるようなトレーニングに取り組めば、もっと上位に行けるという確信が得られた大会でした。
岡田 ちなみに昨シーズンの技術選は、堀島選手が前走と後走を滑るサプライズがありました。名木山大カベの不整地種目を滑ってくれましたが、これまでに技術選を見たことはあったんですか?
堀島 技術選は動画では見たことがありましたが、会場に行ったのは今回が初めてです。会場に行ってみて、率直に「すごいな」と思いましたね。年に1度の大会で、選手の皆さんが技術選にかける思いも伝わりましたし、各メーカーのテントがずらっと並んで、ギャラリーもたくさんいて。僕が出ているW杯よりも賑わっているかも? という雰囲気だったので、スタート前は少し緊張しました。
岡田 水落選手は、堀島選手の滑りを見ることができたんですか?
水落 僕が男子の最後に滑って、そのすぐうしろを堀島選手が後走で滑ったので、ゴールで見ていました。すごかったです、スピードがぜんぜん違うんだもん。
岡田 僕もゴールで見ていました。ああやって滑ってみたいなと思うこともありますが、どうやって滑ったらいいのか……。
堀島 基礎の滑りと比べると、僕たちは脚の吸収の幅が小さい気がしますね。コブに対して高いポジションで滑るので、そんなに吸収しなくていいんです。モーグルの場合はセットポジションが低いと速い動きができないので、膝の位置が高くなるように意識しています。
岡田 勉強になりますね。できるかどうかは別として……(笑)。
水落 モーグルと基礎では、マテリアルのセッティングなどが違いますからね。
岡田 3人のなかで年齢は最も若いですが、REXXAMブーツ愛用歴が1番長い堀島選手。REXXAMブーツを履くきっかけは何だったんですか?
堀島 僕はREXXAMブーツを履かせてもらって10年目になりますが、モーグルの大先輩である上村愛子さんがREXXAMブーツを履いていたこともあって、モーグルをやるならREXXAMブーツっていうイメージがあったんです。それで、中学3年生のころからずっと愛用しています。モーグルでは、コブが向かってくるような状況のなかで足首を自由に動かせることが滑りやすさにつながります。このブーツはうしろの部分にV字の切れ込みが入っていて、足首の前傾角度が取りやすくなっているところが気に入っていますね。
岡田 W杯クラスの大会でも、会場によって雪質の違いは結構あるのですか?
堀島 結構あるんです。雪が降らなくて降雪機を使うようなところは、気温がマイナス20度くらいになります。そういったところではブーツもカチカチになるし、コースもアイスバーンなので、硬いブーツだと前傾角度が保てません。だから僕はフレックス90のブーツを履いて、どんなときでもいいポジションが保てるように意識をしています。
岡田 そうなんですね。では、堀島選手が思うREXXAMブーツの魅力はなんですか?
堀島 僕はコブのなかでもカービングを使いたい気持ちが強いのですが、REXXAMブーツはレースと基礎のモデルがあって、カービングに特化してメーカーで研究を重ねてきています。だからずらしだけでなく、エッジにも乗りやすいところが魅力ですね。
岡田 今、手に持っているブーツは堀島選手がテストとフィードバッグを重ねてできたものだと思いますが、ここがもっと進化したらいいなというところがあれば教えてください。
堀島 モーグル競技のように密脚して滑る場合、どうしてもブーツのインサイドの部分が接触してしまいます。接触するにしても平行にスキーが進むような接触にしていきたい、というのがいま持っているアイデアです。そんなふうにブーツが変わってくると、ブーツが密脚の助けになるので、滑りも変わってくるのかなと思っています。
岡田 なるほど、ありがとうございます。水落選手は昨シーズンからREXXAMブーツを履いていますが、初めて履いたときの印象はどうでしたか?
水落 僕は昔から内脚を使うのが苦手で、内脚のすねが立ちやすかったのですが、このブーツを履いたらスキーを平行に動かしやすくなったんです。滑りの映像を見たときにも、スキーの走りや抜けがぜんぜん違っていて、フィーリングもすごくよかったので「このブーツを履きたい」と思いました。
岡田 技術選は大回り、小回り、不整地と種目が分かれていますが、種目のなかでブーツの特性を感じたことなどはありますか?
水落 技術選ではカービングもずらしも、スキッディング系の動きも求められますが、ターン前半でずらすときの操作がすごくやりやすいです。いい意味でルーズに動いてくれる部分があって、カービングにも強くて、操作性に優れているなと思います。
岡田 では、ここが進化したらいいなと思うところはありますか?
水落 僕は足の横幅がそこまでないので、そういった人でもフィット感が得られたり、足の感覚に敏感になれたりするようなブーツができたら、もっとスキーの操作がしやすくなるだろうし、スキーの性能も引き出せるのかなと。そこは、これから一緒に形にしていけたらうれしいですね。
岡田 ありがとうございます。僕はR-EVO(アールエボ)シリーズから履き始めましたが、第一印象はすごく軽くて、履いていても疲れない。そして日本製だからなのか、足との一体感を感じるんですよね。滑っていても雪面が近く感じるし、水落選手が言っていたように内脚も使いやすい。スキーは外脚に乗ることが大事ですが、内脚がうまく使えないと外脚には乗れません。その点、このブーツはすごく乗りやすいなと。スキーを動かしたり、雪を切ったり、方向を決めたり、ずらしたりもしやすいバランスの整ったブーツです。
岡田 最後に、もうすぐ2022/23シーズンが始まるということで、今シーズンへの抱負と、今後の展望について聞きたいです。
堀島 オリンピックが終わって最初のシーズンということで、昨シーズンを超える成績を出すために、W杯の全戦表彰台は最低限クリアしたいです。何よりも、世界選手権が開催されるシーズンでもあるので、世界選手権での優勝を目標にがんばります。そしてREXXAMブーツをもっと多くのスキーヤーに履いてほしいと思っているので、僕自身の成績も含めてこれからも一緒に高みを目指していきたいですね。
水落 僕は技術選のベストリザルトである4位以内を目指して、夏からトレーニングをしています。今年で44歳、20回目の技術選となりますが、最高のパフォーマンスが発揮できるように身体やメンタルを整えて戦いたいです。そして、技術選にも若い選手が増えてきてはいるものの、アルペンをやりきったあとに引退してしまう若いスキーヤーもまだまだ多い。彼らが次に目指す先として技術選を選んでもらえるように、魅力を知ってもらうための活動にも取り組んでいきたいです。
岡田 ありがとうございます。僕はアルペンスキーの選手だったので、ジュニアのアルペン選手が世界で戦えるようになるための活動をアシストできる存在でありたいですね。そして、競技を引退したあとのセカンドキャリアとして基礎スキーに進む道を整えたり、スキーをずっと好きでいてもらえるような活動をしたり。そんなことも、REXXAMと一緒にやっていけたらいいなと思っています。皆さん、今日はありがとうございました。
全員 ありがとうございました。
写真:中田寛也、近藤ヒロシ
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