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皆川賢太郎と滑る安比高原 & 深堀りコースレビュー

東北のビッグリゾート安比高原を
リゾート全体の改革を手掛ける元ワールドカップレーサー・
皆川賢太郎とともに滑りまくる本企画。

皆川によるコースガイド&楽しみ方レクチャーや
SGならではの視点でお送りするコースレビューなどを交えながら
厳選した10の見どころを紹介していく。

みながわけんたろう●1977年5月17日生まれ、新潟県湯沢町出身。アルペンスキー選手として98年の長野五輪から10年のバンクーバー五輪まで4大会連続で出場し、06年トリノ五輪のスラロームで4位に入賞。W杯では05/06シーズンに総合10位を記録するなど第1シードで活躍した。引退後は全日本スキー連盟 競技本部長を務め、国内で10年ぶりにアルペンスキーW杯を開催。21年に(株)岩手ホテル&リゾート顧問兼マウンテンリゾート事業部統括に就任した

コースの半分が全長2㎞超え
滑りごたえ抜群の安比高原

元ワールドカップレーサー・皆川賢太郎とともに、リゾートとしての再興をビジョンに掲げて2シーズン目を迎えた安比高原。国内外のあらゆるスノーリゾートを見てきた皆川の経験と、20代の頃から会社を経営してきたスキルを生かし、コースレイアウトのアレンジやリフトパスの一新など、約1年で多くのリニューアルが施されたというのは本誌2月号でクローズアップしたとおりだ。

 安比高原は岩手県八幡平市にある前森山と、西森山にまたがるリゾート。周辺に高い山がないため雲が滞留しやすく、安定した積雪量が確保できるほか、北緯40度に位置する寒い地域であるため、湿度の低い良質な雪が降る。全部で21本あるコースは、それぞれの特徴などによって西森・セントラル・ザイラー・セカンドという四つのエリアに区分。コースバリエーションの豊富さもさることながら、コースの半分が全長2、000m超えとあって、滑りごたえのあるスキー場としてファンも多い。今回はそんな安比高原を、皆川と安比高原スキー場の総支配人である畠山護さんと一緒に巡り、安比高原の厳選した10の見どころをたっぷりお届けする。

技術練習にもピッタリ

セントラルゲレンデでうまくなる

畠山 護さん

(安比高原スキー場 総支配人)

はたけやままもる●岩手県八幡平市出身。大学までアルペンスキーに取り組み、卒業後に地元である安比高原スキー場でキャリアをスタート。パトロール、スキースクール校長、営業などの部門を経験したのち、5年前から総支配人を務めている

1 ハヤブサ
(全長 3,000m)

あらゆるターン弧にトライできる長さとバリエーションが魅力

今季の国体コースにもなっている、安比のメインコース。北向きの斜面と高い圧雪技術により、1日中コンディションは良好。最大32度の急斜面や広々とした中斜面、白樺ゲレンデに続く緩斜面があり、滑りごたえもバッチリ

皆川

僕の場合は、上部の急斜面はショートターン、中間はミドル、なだらかな下部をロングで滑ることが多いですね。長いコースのなかで、斜度に合わせて弧の大きさを変えて、スピードをコントロールしながら滑る練習ができます

SG編集部員

僕の場合は、上部の急斜面はショートターン、中間はミドル、なだらかな下部をロングで滑ることが多いですね。長いコースのなかで、斜度に合わせて弧の大きさを変えて、スピードをコントロールしながら滑る練習ができます

2 カッコウ (全長 2,800m)

総合滑降で使われるカッコウは意外と混まない穴場コース!

オオタカを途中で左折してすぐのところにあるカッコウは、検定の総合滑降でよく使われるコース。位置的に風が当たりにくいため静かで、なおかつ広いコース幅と安定した斜度が続くという好条件がそろっている

畠山

ここはいいコースながらあまり混まない穴場。ほかのコースでやった練習の成果を確認したり、白樺ゲレンデとの合流地点までノンストップで行ったりと、安全に配慮しつつスピードに乗って、気持ちよく滑るのがおすすめです

SG編集部員

中間まで見通しのいい中斜面が続いていて、ほどよく飛ばしながら安心して滑れるコース。雪質の良さのおかげでスキーがしっかりグリップしてくれるので、ちょっとうまくなったのでは?と錯覚してしまいそうに……!

3 オオタカ (全長 3,000m)

検定コースの定番!技術志向のスキーヤーが集うロングコース

1枚バーンの急斜面も含まれ、検定の大回り・小回り種目が実施されるオオタカ。中間に作られる予定のモーグルレーンは、検定のコブ種目にも使われる。下部には低速練習向きの緩斜面があり、リフトでの往復が可能だ

オオタカ下部は低速練習におすすめ
畠山

オオタカは検定のほかに、スクールのレッスンでもよく使います。斜面自体に傾きや斜度変化などの癖がないぶん、滑りに左右差があると意外に目立つ。だから正確な運動が求められるという、ごまかしがきかないコースです

SG編集部員

オオタカ上部、1枚バーンの急斜面はショートターンでまっすぐ降りるのが気持ちよかった。白樺ゲレンデに合流する手前の緩斜面は、プルークでの練習にピッタリ。細かな感覚の違いを、余裕をもって確認できる斜度が◎

4 白樺ゲレンデ (全長 1,000m)

パラレルの練習にうってつけ!ホテル直結で移動もラクラク

リゾートセンターの目の前にある、最大斜度16度のゆるやかな斜面が特徴の白樺ゲレンデ。コース幅が広いため、初〜中級者が安心して滑れると人気だ。ホテル直結&クワッドリフトで往復可能なアクセスの良さもうれしい

畠山

初級者向きとはいえ多少の斜度があるので、シュテムターンやパラレルターンの練習におすすめです。広いコースなので、混んでいないときは横移動の距離をしっかり取ると、スピードがコントロールしやすくなります

SG編集部員

広くて斜度もゆるめなので、滑っていて安心感が感じられるコース。低速での技術練習はもちろん、ホテルからスキーイン・アウトができるとあって、朝イチのウオーミングアップとして1〜2本滑るのにも良さそう!

雪質もよくて超気持ちいいー!

圧雪、非圧雪、ツリーラン
良質な雪は楽しみ方もいろいろ

今回は四つのエリアのうち、自慢の圧雪技術で整備されたグルーミングバーンが特徴のセントラルゲレンデ、エリアの大半が非圧雪のザイラーゲレンデ、スキー場で最も大きいツリーランゾーンがある西森ゲレンデを訪問。気持ちよくカービングターンを刻んだり、技術練習をしたりするならセントラル。長距離のパウダーランならザイラー。上級者向けのパウダーランやツリーランなら西森と、一つのスキー場のなかで、その日の雪や気分によって遊びを変えられるのがうれしい。そして、そんな遊び方を後押しするかのように、カービングスキーの上位機種やファットスキーなどを扱うレンタルも完備している。

また、今回は三つあるリフトパスのなかで、さまざまな特典が付いてくるゴールドパスを利用。ゴールドパスがあれば、ゴンドラと全リフトの優先乗車でスイスイと移動し、ゴンドラ山頂のギャラリーでコーヒーをお供に写真家・蜷川実花さんの作品を鑑賞するといった新鮮な体験ができる。このように、雪山を楽しむにあたって他にはない選択肢が増えたということが、今季の安比高原の大きな魅力だ。

非圧雪エリアが拡充!

名物ロングコースはファットスキーで遊ぶ

5 第2ザイラーA
(全長 2,300m)

日本一長いリフトで行く
2km超えの本格パウダーラン

最大斜度34度と、安比で最も急な斜面があるコース。日本一長いリフト「ザイラークワッド」でアクセスするロングコースが今季から非圧雪エリアとなり、2km以上にわたって本格パウダーランを楽しめるようになった

浮力を得ながら滑るのが非圧雪でのポイント!
皆川

全体的に斜度がしっかりあるので、途中で減速することもなく、最後までスピードを保って滑れます。コース幅が広いから、大回りで気持ちよく滑るのもいいですね。ぜひ、ファットスキーに履き替えて楽しんでほしいです

SG編集部員

この日は前日の降雪がなくて少し斜面がハードだったが、雪が降った翌日は気持ちよさそう。もともと整地だった所なので、障害物などもなくて滑りやすいし、これほど長い非圧雪コースは他にあまりないので新鮮だった

極上の雪がワクワクを後押し

広大なツリーランエリアで自然をめいっぱい満喫!

6 西森ゲレンデ ツリーランゾーン

極上の雪とパワフルな地形で自然をより身近に感じる

非圧雪コースとツリーランゾーン(※)のみという、パウダーランに特化した西森ゲレンデ。ツリーランゾーンは他エリアと比べて最も広く、斜度もあるため滑りごたえは抜群。手つかずに近い自然を、存分に楽しめるエリアとなっている

皆川

ロングコースが多い安比ですが、ここは短いリフト1本で回れるので、また違った楽しさを感じてもらえるはず。難易度は高いですが、エリアの中には開けたところもあって面白いと人気です。安全に配慮して楽しんでください!

SG編集部員

少し斜度が急に感じたが、滑り出すとパフパフのパウダースノーがすごく気持ちよかった。空いていて静かで、場所によっては景色も楽しめるので、居るだけで癒やされる。エリアに詳しい人と一緒に行くのがおすすめ

ゲレンデ以外にも魅力いっぱいの安比高原

7 優先乗車などの特典がうれしいゴールドパス

3種類あるリフト券のうち「ゴールドパス」は、すべてのリフトと安比ゴンドラへの優先乗車や、ゴンドラ山頂にある専用ラウンジの利用といった特典つき。写真家・蜷川実花さんの作品も鑑賞でき、滑り以外の時間も贅沢に過ごせるのだ

蜷川さんの作品をラッピングしたゴンドラへの乗車も特典のひとつ。晴れた日は作品越しに日の光が入り、より幻想的に
ゴンドラ山頂の専用ラウンジにも、蜷川さんの作品を展示。無料のコーヒーやクッキーをお供に、アートが楽しめる

8 ハイクラスな最新ギアがそろうレンタル

レンタルの特徴は、デモモデルをはじめとする、上級者向けの最新アイテムも多数そろっていること。これらは滑る状況などに合わせて、何度でも交換OK。さらにWEBでの事前エントリーも可能なので、到着してすぐに滑り出せるのがうれしい

今季の最新かつ、ハイエンドなアイテムがずらり。エキスパートレベルにも対応した品ぞろえが魅力だ
スキーの交換は何回でもOK。カービングスキーやファットスキーなど、雪やコースに合わせてアイテムが選べる

9 スキーを履かなくても楽しい!恐竜に会えるキッズランド

豊富なスノーアイテムをそろえたキッズランド。スキーを履かなくても遊べるが、広くなったスキー・スノーボード専用エリアでスキーデビューするのもおすすめ。ゲレンデとはネットで区切られていて、安全に遊べるのもポイントだ

入場ゲートでは小さな恐竜たちがお出迎え。ソリやチュービングなど、多様な楽しみ方ができる人気のエリアだ
夏の安比高原で好評の恐竜パークが、今季から雪山に登場。子どもも大人も遊び心をくすぐられること間違いなし

10 ツリーランの練習にもおすすめなマジックフォレスト

10ヘクタール以上の広さをもつ「マジックフォレスト」では、簡易的なツリーランが体験できる。やさしい斜面設定で誰でもトライしやすく、ゲレンデよりも自然が身近に感じられるとあって、レベルや年齢を問わず人気

ゲートをくぐると、テープが張られたルートに沿って散策開始。今後は複数のルートを選べるように拡大予定だそう
マジックフォレストの下部にも、恐竜パークの恐竜たちが。木に紛れていたり、雪に潜っていたりするので探してみて

写真:木下健二、編集部 / 撮影協力:岩手ホテルアンドリゾート