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Always Good Times ―エランが描く未来に触れてみよう―

創業以来スキーの製造技術が評価されてきた老舗ブランドのエランは現在、そのノウハウを生かしつつも、時代の移り変わりとともに変化したビジョンのもとでスキーを展開している。

近年は、どんなスキー作りをしているのか。

そして来シーズンには、どんなスキーがお披露目されるのか。

エランが今、描いている未来に触れてみよう。

ブランドの歩み

1945年にスポーツ用品などを製造する企業としてユーゴスラビア(現スロベニア)で創業したエランは、アルペン用スキーの開発力、製造技術力で高い評価を獲得。インゲマル・ステンマルクらトップ選手の活躍を支えたほか、W杯の表彰台を独占するなどの功績を残した。近年は世界最大級のデザイン賞こと「レッド・ドット・デザイン賞」を受賞するなど、テクノロジーのみならず、デザイン性にもこだわり抜いたスキー作りを続けている。

レースで培った開発力を武器に “みんなで楽しむスキー”を提案

現在ナショナルチーム入りしているのは、古野 慧、小林竜登、中西 凛。古野は昨季の世界選手権で9位、中西はユニバーシアード優勝と今後の活躍が期待される

スキーを愛するすべての人に寄り添えるスキーを目指して

1970年代以降のアルペンスキーシーンにおいて一時代を築き、今では当たり前となったカービングスキーの先駆けでもある老舗ブランド、エラン。エランといえばアルペンスキー、と広く認識されるほどの高い開発力、そして製造技術力は、創業から78年がたった現在にもしっかりと継承されている。

現在のエランは、数年前から掲げている「Always Good Times」というスローガンのもと、レースカテゴリーにおいてはスキークロス向けのスキー作りが中心となっている。アルペンスキーで培った技術を土台としたスキー作りによって、2018年の平昌五輪スキークロス競技で男女とも金メダルを獲得し、2022年の北京五輪で表彰台の大半をエラン所属の選手が占めるなど、スキークロスシーンでも確かな技術力を発揮。スキークロスに求められるターン性能を高い次元で表現することに成功し、ここ数年で着実に評価を獲得してきた。

スローガンである「Always Good Times」とは、スキーを愛する人たちのライフスタイルの中心に、常にエランがあるというビジョンをもとに生まれた言葉だ。エランにとってスキーは、みんなで楽しむもの。そこにフィットした良質なスキーを作ることで、みんなで楽しむスキーを後押しする存在であることが、スキー開発における軸となっている。

現在のエランのスキーは、レースカテゴリーで評価されてきたパフォーマンスを、オンピステやバックカントリーなど、それぞれのフィールドに適したテクノロジーとともに搭載。みんなで楽しむスキーを、よりいっそう充実した時間にしてくれるラインナップが特徴といえる。

スキークロスシーンでも、エラン所属の選手は表彰台争いの常連。中央に写るライアン・レゲツ(スイス)は北京五輪での金メダルと、W杯総合優勝を獲得した絶対王者だ

一新されたPRIMETIME(プライムタイム)で オンピステの楽しさを再認識

左右非対称の性能が、一目でわかるデザインも特徴。わかりやすい性能にこだわったスキー作りで、デザイン賞をはじめとする多くの賞を受賞してきた

たわみに特化した構造で より速く、直感的に

エランにとって2023/24シーズンの大きなトピックスとなるのは、人気シリーズ「AMPHIBIO(アンフィビオ)」がフルモデルチェンジをし、新たに「PRIMETIME(プライムタイム)」として登場する、ということだ。プライムタイムは、ゲレンデでのターンの質やスピードの向上にこだわるスキーヤーに向けた、カービングターンのパフォーマンスを追求するシリーズ。と言っても、単にレース用のスキーを乗りやすくした、といったものではない。レース用スキーの製造で培ったノウハウを取り入れつつも、あらゆるレベルのスキーヤーを想定して一から設計しているとあって、レジャースキーからスピードを求めるエキスパートまで、幅広くカバーしてくれるモデルがそろう。

来季のプライムタイムは、気持ちいいカービングターンを刻むために欠かせない たわみ を効果的に引き出すことを目指している。トップからテールまでがきれいにたわむよう、スキーに重ねる素材は最低限に絞ったほか、片方のスキーのなかに、内側と外側で構造に変化をつけたテクノロジーを搭載。これによりエッジコントロールがしやすくなり、より直感的な操作も可能になっている。

たとえば、パラレルターンで内脚を傾ける、という動きは内側に働きかける恐怖心がネックになりやすい。こうした動きを助けてくれるのが「アンフィビオ プロファイル」というテクノロジーだ。スキー自体にわずかな傾きをつくったことで、内脚を倒すときにアウトエッジが妨げにならないような、そして外脚側は雪面がしっかりと踏み込めるような構造になっている。

テクノロジー

アンフィビオ プロファイル

スキーの内側は接雪し、外側がわずかに浮く形状をしている。これにより両脚のスムーズな傾きをアシスト。エッジグリップもサポートする

デュアルデンシティ ウッドコア

スキーの内側に密度が高くて厚いウッドコア、外側に密度が低いウッドコアを配置。エッジコントロールとたわませやすさが向上した

ゲレンデをカービングターンで滑ったときの、あの気持ちよさ。スキーで得られるこうした感動は、誰かと共有してこそ思い出深いものになる

気持ちいいカービングターンは スキーで感じる楽しみの一つ

また、スキーの内側と外側では、ウッドコアの厚さと密度にも変化がつけられている。インエッジ側となる部分に密度の高いウッドコアを厚めに配置し、アウトエッジ側となる部分に軟らかくて密度の低いウッドコアを配置。この「デュアルデンシティ ウッドコア」というテクノロジーが、内脚の使いやすさやスキーのたわみ、スピードをこれまで以上にサポートしてくれる。

あわせて、ここ数年ほど広くなりつつあったセンター幅も69ミリに戻したことで、ターン前半の早い捉えも実現。エッジを立たせたいところですぐに立てられるような工夫が施され、思い通りのカービングターンが刻めるようになった。

技術レベルが上がるにつれて、内脚を機能させながらのコントロールが、安全に速くターンをする上での一つの大きな壁となる。内脚がうまく倒せないと悩むスキーヤーにとっては、スキーそのものがスムーズに動かせる構造になっているプライムタイムは、レベルアップにも、エンジョイスキーにもぴったり。ハイスピード下のパフォーマンスを重視した「プライムタイム55」や、上級者を中心とした幅広いレベルに絶対的な乗りやすさを提供する「プライムタイム44」など、10種類のラインナップがあるのもうれしい。

スキーを通じて得られる楽しみの一つとして、本当に気持ちいいカービングターンの感覚を追求する、ということをプライムタイムで提案しているエラン。レースカテゴリーのノウハウを土台としつつ、「Always Good Times」を実現していくスキー作りは、これからどう進化を見せるのかが楽しみだ。

おすすめ機種

モデル名:PRIMETIME 55 FUSION X

価格:¥165,000(税込)
スペック:サイズ(cm) 144, 151, 158, 165, 172, 179
サイドカット(mm) 121-69-102(全サイズ)
ラディウス(m) 15.1(172cm)

プライムタイムのトップモデル。メタルの配合量が高くハリを感じられるので、パワフルなカービングターンでゲレンデを楽しむのにおすすめ

モデル名:PRIMETIME 44 FUSION X

価格:¥143,000(税込)
スペック:サイズ(cm) 144, 151, 158, 165, 172, 179
サイドカット(mm) 121-69-102(全サイズ)
ラディウス(m) 15.1(172cm)

プライムタイムのセカンドモデル。55よりもメタルの配合量を減らしたことで、幅広いレベルのスキーヤーが滑りやすいと感じる一台になった

モデル名:PRIMETIME 22 BLUE POWER SHIFT

価格:¥106,900(税込)
スペック:サイズ(cm) 144, 151, 158, 165, 172, 179
サイドカット(mm) 127-73-111(全サイズ)
ラディウス(m) 13.5(172cm)

プライムタイムのスペックを持ち、なおかつ軽量化されたモデル。軽いタッチが好みの人や、リターンスキーヤーにおすすめしたい一台だ

モデル名:PRIMETIME Nº5 W POWER SHIFT

価格:¥143,000(税込)
スペック:サイズ(cm) 144, 151, 158, 165, 172
サイドカット(mm) 121-69-102(全サイズ)
ラディウス(m) 12.5(158cm)

プライムタイムの、レディースラインのトップモデル。女性の力でもしっかりとスキーをたわませることができ、パワフルなターンにも対応してくれる

モデル名:PRIMETIME Nº4 W POWER SHIFT

価格:¥137,500(税込)
スペック:サイズ(cm) 144, 151, 158, 165
サイドカット(mm) 121-69-102(全サイズ)
ラディウス(m) 12.5(158cm)

レディースラインのセカンドモデル。乗りやすくて速い、というプライムタイムのなかで、どんなレベルにもマッチするといえる一台だ

モデル名:PRIMETIME Nº2 W WHITE POWER SHIFT

価格:¥106,900(税込)
スペック:サイズ(cm) 144, 151, 158, 165
サイドカット(mm) 127-73-111(全サイズ)
ラディウス(m) 11.1(158cm)

プライムタイム22と同様に、軽量化されたモデル。高スペックながら少ない力でも扱うことができる。手に取りやすい価格もうれしい

モデル名:GSX WORLD CUP X PLATE

価格:BIN/ER17FF ST(セット価格):¥212,300(税込), BIN/ER14FF(セット価格):¥201,300(税込)
スペック:サイズ(cm) 185,191 
ラディウス(m) 25(185cm), 27(191cm)

スキークロス競技用モデル。マスターズレーサーや、技術選に挑戦するようなエキスパートにもぴったりの性能を備えている

モデル名:SLX WORLD CUP PLATE

価格:BIN/ER17FF ST(セット価格):¥212,300(税込), BIN/ER14FF(セット価格):¥201,300(税込)
スペック:サイズ(cm) 157,165 
ラディウス(m) 11.5(157cm), 12.6(165cm)

SL競技用モデル。エランスキーのハイパフォーマンスを最も強く印象づける一台で、技術選やテククラ受検もカバーするショートターンモデル

文:編集部