スキー情報総合サイト スキーネット:SKINET

山田卓也の3つの癖から脱却ショートターン改革
傾き+回転力を引き出すTips

傾き+回転力を引き出すトレーニングTips

技術革新によって、従来では考えられなかったほど鋭いレスポンスを得ることが可能となった現在のスキーマテリアル。

半面、その特性を十分に生かせず、とくに「ショートターンでうまくスキーを動かせない」と悩んでいるスキーヤーは少なくないようだ。 ここでは、名手・山田卓也に登場願い、洗練されたショートターンを邪魔するという3つの癖と改善策について聞く。

クラシックスキーを持ち出して実演!解説=山田卓也

やまだたくや●1973年3月13日生まれ、北海道滝川市出身。1998年の初認定からSAJナショナルデモンストレーターを10期務めた。全日本スキー技術選では、98年の田沢湖大会で初の2位入賞を果たしてから、2位通算4回、3位通算4回を記録。勇敢な戦いぶりと、しなやかで繊細な雪面タッチの滑りは、彼ならではの魅力として多くのファンを惹きつけている

カービングスタイルのショートターンを実践するための条件とは?

ピボット操作を中心とした平面的な動きから傾きとたわみを生かした立体的な操作へ

SG 用具の進化とショートターンのトレンドには、どんな関係があるのですか?

「1990年代に起こったスキーの形状(主に長さとサイドカーブ)の進化は、滑走技術に大きな変革をもたらしました。とくにショートターンでは、従来の滑りが『スキーの向きを変えることを重視し、制動性を求めたもの』であったのに対し、現在の技術は『スキー自体が持つグリップの強さや回転力を生かして、方向付け+弧を描く』ことがスタンダードになっています。前者が『ピボット的な平面的操作』で、後者が『傾きとスキーのたわみを生かす立体的操作』とも言えます。またこれは、いわゆる『ウェーデルン』と『カービングショート』の違いにも通じます。『ウェーデルン』はどちらかというと『ターン後半にエッジングが集まりやすい操作』で制動性を重んじたもの。『カービングショート』は、『ターン前半からスキーに角づけを与え、たわませる』ことで円い弧を描く、推進性に優れた技術です」

SG どちらかが優れているというわけではないのですね。

「もちろん、従来の滑り(以下、クラシックスタイルと呼ぶ)がダメで、現代の滑り(以下、モダンスタイルと呼ぶ)が優れているということではありません。最新のスキーでも、急斜面の狭いコースなどでは、後半で強いエッジングを行ない、落差を抑えたクラシックスタイルのほうが安全な場合もありますし、反対にクラシックスキーを履いていても、高い運動精度で傾きやたわみを活用できれば、カービングショートターンを行なうことだって可能です」

SG ウェーデルン的な動きに慣れてしまった人が、モダンなショートターンを身につけるために何かヒントはありますか?

「サイドカーブの浅いスキーを使っていた期間が長い人ほど、ショートターンで悩む傾向があります。その原因として考えられるのが『傾き不足』『逆ひねり』『動きを止めるストックワーク』の三大癖。逆に言えば、この3点を今のマテリアルに合致するようにすれば、ターン前半から円い弧を描き雪面にスキーを切り込ませるようなシャープな滑りを目指せます。今回、クラシックスタイルの滑りを改めて解説するにあたり、実際に当時のスキーを使い、私自身が滑りを再現する試みも行ないましたので、運動の本質をじっくりと比較できるはずです。クラシックスタイルが悪くてモダンスタイルが優れているというような短絡的な見方はせずに、スキー操作の選択肢を増やすという意識を持つのも大事ですね」

SG 2つのスタイル、それぞれの運動の特徴について教えてください。

「クラシックスタイルは、スキーを平面的に動かすピボット操作がメイン。脚部の内傾が浅く、スキーの角づけ量も少ないため、切れのターンにはなりません。反対にモダンスタイルでは、切りかえ直後に重心が次のターン内側に大きく移動するので、脚部に明確な内傾角が生じます。この結果、ターン前半からスキーの角づけとグリップが生まれ、早いタイミングから弧を描いていけます。これを上下動という観点から見ると、スキーの真上で体軸を真っ直ぐに使い、アップライトなポジションで斜面に対して垂直方向の動きをしているのがクラシックスタイル。スキーの真上にポジショニングしつつも、切りかえでの明確な重心移動で『前後の動き』をプラスしたものがモダンスタイルといえるでしょう。ターン後半のエッジングがスピード制御を担うクラシックスタイルは、急斜面を安全に滑り降りる技術として今でも有効ですが、スキーのレスポンスを推進力に転換させるような動きにはなりません。
ここからは、早い捉えでターン前半からしっかりとスキーが弧を描き、なおかつ推進力のあるモダンスタイルを実現するために、洗練させるべき3つの要素、『重心移動』『回旋動作』『ストックワーク』について、エクササイズを交えながら解説していきます」

ターンスペースは比較的狭く、スキーの向きを変えることが主目的となっている。ニュートラルでスキーがフォールラインに向き、エッジングは後半に集中している。マキシマムで強い逆ひねりのポジションが現れており、これが次のターンでスキーの向きを変える「ひねり戻し」の動きにつながっている。また手首を返すようなストックワークも特徴的

スキーを回転させるための動作が明確に現れている。ニュートラルから谷回りの部分で体軸の傾きと角づけがあり、前半から円い弧を描くようなラインをトレース、切れと推進性を追求した滑りだ。マキシマムではたわんだスキーの圧を受け止めるために「順ひねり」的なシルエットになっている。腕を広く構え、ストックはハの字状に突いている

アップライトなポジションで、体軸も「真っ直ぐ」になっている。常に腰の下にスキーブーツがあるような位置関係でバランスは良い半面、やや上に抜けるような上下動になり、スキーを横方向に出すことが難しく、ニュートラルでトップがすぐにフォールライン方向に向いていることから分かるように、ターンスペースが狭くなっている

切りかえで、次のターン内側への明確な重心移動が見られ、上方向に抜けるような上下動はありません。ターン前半ですでにスキーがたわみ始め、雪面をグリップして弧を描いているため、ターンスペースが大きくとれています。また、クラシックスタイルに見られるような「逆ひねり」の局面がないことも特徴です

傾き+回転力を引き出すトレーニングTips
Step1 重心移動

傾きとターンスペースを引き出すために。重心移動の洗練を目指そう

クラシックスタイルの滑りでも、重心移動は大切な運動要素です。ただウェーデルン的な滑りにおけるそれは、「斜面下方向への直線的な重心移動」であり、モダンスタイルの「次のターン内側に積極的に重心を運ぶ」動きとは、やや異なります。

アップライトなポジションで縦方向を意識するクラシックスタイルでは、スキーが身体からあまり離れないため、脚部の内傾角は大きくなりません。対してモダンスタイルでは、ターン前半からの傾きと角づけを引き出すために切りかえで明確な重心移動を行ない、それがターンスペースと落差をとるためにも重要な要素となります。このとき、腰をスキーの進行方向に正対させるようにイメージすると、脚部の伸展を利用しやすいので、より明確な重心移動が行なえます。また、ターン前半では、次のターン内側に重心を運ぶ動きの中に「前後動」の要素もあり、これが「雪面を捉えた弧を描く谷回り」につながります。

さらに、ストックワークと重心移動の関係も大切です。クラシックスタイルの「手首を返し斜面に垂直に突く」動作は、身体をブロッキングさせ、連続した重心移動をいったん止めてしまいます。モダンスタイルでの「ハの字状に突く」ストックワークは、重心移動の連続した流れを妨げないばかりか、むしろ滑らかに重心を移動させる補助動作にもなります。

Training 1

ストックを身体の前で持ち、重心移動を意識して滑る

1

ストックが常に正面を向き、マキシマムで逆ひねりが現れている。体軸の使い方が縦方向主体になっているので、「圧を受けるエッジング」になりやすく、重心移動も乏しい滑り

3

ストックの向きが常にターン進行方向に向いていて、切りかえ直後には大きな重心移動とともに先行動作が見られる。これにより、体軸には「傾き」が、スキーには「角づけ」が生じ、ターンスペースと落差をしっかりとった滑りが可能となる。逆ひねりも少ないため、スキーの推進力が邪魔されず、円く滑らかな弧を描くことができる

Training 2

片プルークでショートターン

プルークスタンスでできる外脚の傾きを意識しながら、重心をクロスオーバーさせる。このときに外脚の伸展をイメージすると、雪面の捉えも良くなる。外スキーが身体から離れて、また戻ってくる感覚を感じながら行なうと、円い弧を描ける。手首を返すようにストックを突いてしまうと、ブロッキングが強まり、重心が移動しにくくなるので注意

重心移動を引き出せないストックワーク

身体を縦方向に使ったクラシックスタイルの運動では、逆ひねりと同時にブロッキングの要素が強い。「止めるエッジング」になりやすく、重心をスムーズに移動させることは難しい

Training 3

ワイドスタンスで重心移動を意識する

ワイドスタンスで、重心移動をしっかりと意識して滑る。注意点は切りかえで重心を「次のターン内側に」運ぶイメージを持つことと、腰をスキーの進行方向に向けていくこと。小回りだからといって、タイトにターンするのではなく、中回りくらいのターンサイズで、ゆったりと滑ってみよう。また肩、腰のラインは水平に保つようにする

「止めるエッジング」が重心移動を邪魔しているパターン

体軸を縦方向に使うと、マキシマムで逆ひねりが出て重心もスムーズに移動しない。また雪面からのリバウンドを強く受けてしまうので、上方向に伸びるような上下動になりやすく、なおさら重心移動はしにくくなる

Training 4

トップをターン内側に向けるように脚を伸ばす

ワイドスタンスで、スキーのトップをターン内側に向けていくように外脚を動かす。このとき、外脚全体を内旋させながら、同時に伸展させることで、重心を常にターン内側にキープでき、スキーの動きを止めない操作が可能となる。脚部だけをひねると外向傾が強まり、ブロッキングポジションになってしまうので、腰も一緒に動かしていくことが大切

前傾ポジションのほうが動きを出しやすい

滑走中は常にスキーが進んでいるので、スネと背中の角度を合わせ、上体の前傾をしっかりととった懐の深いポジションが有利だ。ただし、必要以上に足首や膝を曲げると、つぶれたポジションとなってしまうので注意しよう

Step2 回旋動作

スキーの回転力を引き出して、推進性あるターンを目指す

回旋は、クラシックスタイルでもモダンスタイルでも重要な運動要素ですが、前者が「脚部のひねりを主体とした」動きなのに対し、後者では「脚部とともに身体全体を使う」動きである点にやや違いがあります。

クラシックスタイルでは、マキシマムでの逆ひねりと、そこから生まれる「ひねり戻し」がスキーを回転させる原動力となりますが、モダンスタイルでは、スキーと一緒に重心が動きながら、先行動作によって回転力のきっかけを得ることが大切です。また、両スキーにバランスよく荷重するために内脚を外旋させる感覚も重要で、これがないと、腰の向きがフォールライン方向に固定されてしまいやすく、スキーの推進性を損ねてしまいます。

脚部のひねりと同時に、腰や上体の向きもスキーの進行方向に向けていくことで不要な圧変動が生じずに、滑らかで推進力あるショートターンを行なえるようになります。

Training 5

腰のターン方向への回転をイメージして滑る

腰の向きをスキーに正対させるようにして、ターン方向への回旋を表現してみる。クラシックスタイルのような「縦方向に体軸を使う運動」だと、脚部の内傾が生まれないので、単なるローテーションになってしまい、雪面グリップも弱くなる。ターン前半から体軸の傾きを出して、スキーに角づけを与えることで、雪面への働きかけが良くなる

Training 6

積極的な先行動作を使って滑る

2コマ目から3コマ目に見られるように、切りかえの局面で、重心移動と同時に腰や上体の向きを積極的にターン方向に向けていく。この先行動作によって、スキーの面はスムーズに切りかわって円い弧を描き始める。先行動作は、あくまでもターン方向に動いていくことを意識し、スネと背中の前傾角を合わせて、上体が起きすぎないように注意しよう

Training 7

内脚の外旋を意識して滑る

ターン後半で内脚がブロックされてしまうと、X脚になりやすかったり、外脚の傾きだけが強くなってしまったりして、雪面の捉えが甘くなってしまう。重心を両スキーの間に置くようにして、バランスよく荷重しながら内脚を外旋させよう。外脚を内旋させる動きに比べ難しいので、ワイドスタンスでじっくり練習したい

Step3 ストックワーク

流れと推進性を生かすストックワークはバランスが良く、シルエットも現代的

スキーの回転に合わせてストックのリングやシャフトもターンさせるイメージを持つと、上体が安定して進行方向に身体を使えるようになります。また、リングを雪面からあまり離さないように操作することも大事。そのためには腕をやや広めに構え、ストックをハの字状に突くようにすると良いでしょう。手首を返して斜面に垂直にストックを付くと、頭がターン外側に動き、外脚が曲がりすぎて伸展荷重が行なえなくなります。その場でスキーの向きを変えるだけのような滑りなら、これでも構いませんが、シャープに円いターン弧を描くのは困難です。モダンスタイルのストックワークは、ターンのきっかけというよりも「重心移動の補助動作」と考えたほうが良いでしょう。

Training 8

広く、ハの字を意識して構えてストックワークを行なう

ストックのリングがスキーと一緒にターン軌道を描いて動いている点に注目。雪面からあまり離さずに、低い位置で動かしているのもポイントだ。腰が回旋する動きと外腕がシンクロしているので、流れが止まらずに滑らかな運動となっている。また手首は返さずに構えたところで突くようにすると無駄な動きがなくなる

ストックワークの悪い例

ストックを突くことで大きく重心移動しようという意識が強すぎると、内肩が下がって内倒し、外脚への荷重感を失い、外スキーはきれいに回転してくれない

ストックとスタイルの関係

体軸を縦方向に使うクラシックスタイルで滑っていた頃は、112㎝前後のストックだったが、現在は106㎝を使用している。ベースポジションの違いもあるが、ターン前半から積極的に傾きを作り、スキーのたわみで回転力を得るようになったため、ストックに体重を預ける必要がなくなったことが大きいといえる

Epilogue

スキーの性能を余すところなく引き出そう!

今回は、クラシックスタイルとモダンスタイルそれぞれのショートターンを解説しながら、最新のショートターンをマスターするためのさまざまな練習を紹介しました。エピローグとして、もう一つアドバイスしたいのは「小回りだから、クイックに素早くスキーを回さなくては」などとは決して考えないこと。スキーの向きを変えることが重要なのではなく、「スキーが回転していく『状態』と『位置』に、どうやって動かすか?」がポイントなのです。そのための要素として挙げたのが「重心移動」「ストックワーク」「回旋動作」の3つ。これらを洗練させることで、スキーの性能を余すところなく引き出し、斜面状況にも左右されにくい強い滑りが可能となるはずです!

写真:鈴木馨二(ホワイトデポ)/ 文:近藤ヒロシ / 協力:サホロリゾート